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社説・コラム

コラム 天風録 「オバマ新大統領」

■論説主幹 山城滋

 真珠湾攻撃は何度も出てくる。核拡散防止にもページを割いた。でも原爆投下を取り上げたところは見当たらない。米大統領に選ばれたオバマ氏の著書「合衆国再生」(ダイヤモンド社)を読んで、少し違和感が残った▲「変革のときが訪れた」。支持者の前できのう、自信に満ちた勝利宣言をしたオバマ氏。その変革の中には、「核兵器のない世界への希求」もある。一方的な軍備撤廃には否定的とはいえ、言葉通りなら思い切った核政策の転換につながるだろう▲その新大統領の姿がひょっとしたら2年後、広島市の平和記念公園で見られるかもしれない。2010年に日本で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議。もし広島誘致が実現すれば、である▲心揺さぶる演説でケネディ元大統領と比べられるオバマ氏。イラク撤兵と引き換えに、アフガニスタンへの増派を主張する。テロとの戦いにはそんなやり方しかないのか。平和外交を唱えながら、ベトナム戦争の泥沼に足を踏み入れたのはケネディ政権だった▲「世界平和と平等こそが国益になる」というオバマ氏。被爆地に立てば、核兵器がどれほどの惨禍を招いたか、身をもって感じるはずだ。そのとき、どんな言葉が聞けるか。ヒロシマは待っている。

(2008年11月6日朝刊掲載)

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