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社説・コラム

コラム 論説室から 「『変革』の約束」

■論説委員 宮崎 智三

 米国の大統領は「希望」を語り、日本の首相は「危機」を語りたがるそうだ。国民性の違いもあるが、米国では、何事にも屈しない前向きさがリーダーに不可欠だと考えられているのだろう。

 次期大統領に選ばれたオバマ氏にも、そんなタフさが相当求められるに違いない。「100年に1度」ともいわれる金融危機や、相次ぐテロなど不安定な国際情勢…。未解決のまま現政権から引き継ぐのは難問ばかりだ。

 ヒロシマとしては、「公約」として掲げた核兵器のない世界を実現できるかどうかが最も気になる。ブッシュ政権の8年間で核軍縮の流れは止まり、核拡散には歯止めがかからない。現状を変革してほしい、との思いは切実だ。

 1人のリーダーに、どれだけのことができるだろうか。「過度な期待は禁物」「結構頑張ってくれそう」。米国に詳しいジャーナリストに聞いても見方は分かれる。

 それでも、何かできるかもしれない気がする。今夏の米民主党大会の取材で、オバマ氏の演説を直接聞く機会があったせいかもしれない。何より言葉に力があった。前を向いて一緒に歩きだそう。そんなメッセージを強く感じた。

 3カ月たった今も、「イエス・ウィー・キャン(われわれにはできる)」の余韻が残っている。1月20日に就任するオバマ氏。核超大国のリーダーとして、廃絶への道を切り開くことができるかどうか、ヒロシマは注視している。

(2008年11月30日朝刊掲載)

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