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社説・コラム

社説 ガザ停戦 流血の連鎖断つ努力を

 パレスチナ自治区のガザに、空と陸から激しい攻撃を続けてきたイスラエルがおととい、一方的に停戦した。ガザに侵攻した地上部隊の一部が撤退を始め、戦火もほぼ収まってきたようだ。

 ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスも同じ日、即時停戦を発表した。先月末に空爆が始まって、22日ぶりの戦闘停止である。本格的な停戦につなげるための努力を、双方に求めたい。

 イスラエルの攻撃によるパレスチナ人死者は1300人を超えている。3人に2人が民間人だ。400人以上が子どもという。国際社会から「無差別殺りく」と非難されたのも当然だろう。負傷者も約5300人に上り、4000戸が破壊されたと報道されている。

 半年以上も前から、イスラエルは大規模な軍事作戦を準備していたといわれる。国際社会が年末年始の休暇に入った間に作戦を始め、ハマスを徹底的にたたく。そのうえで「味方」であるブッシュ米大統領の在任中に収拾するのが既定方針だった-とする観測もある。攻撃が一定の成果を挙げたとして、オバマ次期米大統領の就任直前というタイミングで停戦に踏み切ったとみられる。

 これに対しハマス側は、被害は大きかったものの、軍事面では壊滅的打撃を受けたとまでは考えていないようだ。イスラエル軍の早期撤退を求める国際的な圧力をてこに、境界検問所の封鎖解除など、少しでも有利な条件に持ち込もう、という強気の構えである。

 ひとまず停戦はしたものの、現時点では双方が一方的な停戦を宣言したにすぎない。当事者間や第三者を交えた停戦条件などの合意はないままである。

 イスラエルのオルメルト首相は「停戦が守られれば、早期に全面撤退する」としている。具体的な撤退の時期を明示することが先決だろう。

 ガザでは境界検問所の封鎖強化によって、食料や燃料、医薬品などが底をついているという。住民の生命を守る、人道的な見地から封鎖を解除することも不可欠ではないか。

 「1週間以内に撤退しなければ攻撃再開も辞さない」としているハマス側にも、自重を求めたい。

 イスラエルは、ハマスを交渉相手としては認めていない。それぞれと関係がある国の協力なしに、本格的な停戦にこぎつけるのは難しいだろう。

 フランス、英国、ドイツなどの首脳は人道援助や検問所再開などについて協議。エジプトのムバラク大統領も復興を協議する国際会議を開くと明らかにしている。

 ブッシュ政権下で、イスラエルの「自衛のための戦い」を容認してきた米国の責任も大きい。オバマ次期大統領にはパレスチナの主張にも耳を傾け、中東和平の道を開くリーダー役を期待したい。

 今月から国連安保理の非常任理事国になった日本は、イスラエル、パレスチナ双方と関係が深い。積極的な働き掛けに乗り出す時期でもあろう。

(2009年1月20日朝刊掲載)

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