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追悼祈念館聞き取りスタート 学徒動員中の前土居さん

■記者 東海右佐衛門直柄

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は16日、本年度の被爆体験の聞き取り事業を始めた。初日は、学徒動員中に被爆した府中町の前土居時男さん(76)が同館を訪れ、64年前のあの日の記憶を語った。

 「真っ白い光に包まれ、体が宙に浮いた。死ぬるなと思った」「街は地獄絵図。半狂乱の状態で逃げた」―。前土居さんは当時、三篠国民学校高等科の1年生。爆心地から約3キロの三篠本町で学徒動員中に被爆し、手や足にやけどを負った。この日は、約1時間にわたり職員2人に証言した。

 前土居さんは戦後、大勢の人が亡くなる光景を思い出すのがつらくて証言は避けてきた。しかし、7月に体調を崩して2週間入院。「残された時間は少ない。真実を後世に残さなくては」と決意し、証言者の募集に申し込んだ。

 同館は2006年度から毎年度、証言する被爆者を公募。これまでに計37人分の証言を館内で閲覧できる体験記にまとめた。本年度の募集には7人が応じ、11月末までに聞き取りを終える。

(2009年9月17日朝刊掲載)

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