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社説・コラム

核問題をイラン大使 城田安紀夫氏に聞く

■記者 北村浩司

 ウラン濃縮活動を続けるイランは、核兵器開発の疑惑が取りざたされている。このほど公務で一時帰国した城田安紀夫イラン大使(59)=広島県坂町出身=に、日本としてこの問題にどう対処すべきかを聞いた。

 -イランに対しては核兵器開発の疑念があります。
 政府が公式に核兵器の開発を明言し、核実験もした北朝鮮の問題などとは分けて考えるべき。イランは一貫して平和利用が目的だと言っており、国際原子力機関(IAEA)による一定の保障措置も受け入れている点は評価すべきだ。

 その上で、「信用できない」「いつ核兵器開発に走るかわからない」という不安が国際社会にあることをイランに理解させ、透明性を高める努力をさせるよう促したい。

 -包括的核実験禁止条約やIAEAの追加議定書を批准していません。説得は可能でしょうか。
 確かにその通りだ。しかし、イラクとの戦争で毒ガス兵器の被害に遭うなどの歴史もあり、戦争の痛みを背負い、平和を願う国民の気持ちはわれわれと変わらない。政府間の関係だけでなく、国民どうしの関係を大切にすれば解決の道は見つかると信じている。

 -日本の役割は。
 反発や警戒心を持たれている米国、ロシアや英国などでは難しいが、日本の言うことには耳を傾けてくれる。友人として言うべきは言いつつ、相手と正面から向き合って国際社会との関係を調整しなければならない。

 イランが万一、核武装すれば中東や南アジアに激震が走り、核開発競争につながりかねない。それだけは避けなければならない。米国の政権交代もあり、変化の芽はある。現地での日本への期待は非常に大きい。

 -広島の訴えはどんな意味を持ちますか。
 私が日本に呼んで広島にも足を延ばしてもらった人は、原爆の被害を知って涙を流したと聞いている。自分から積極的に話さなくても私が広島出身と知ったら共感してくれる。

 しかし、ただ悲惨な過去を言うだけでなく、復興の歩みや成果も伝えるべきだ。中東では現実に多くの人が戦火に焼かれ、傷ついている。そこからどう立ち上がり、暴力の連鎖を止めて平和で豊かな社会を築くかを人々は知りたがっている。広島の経験を生かす場面は限りなくある。

 しろた・あきお 広島学院高、東京大卒。カタール大使、国際テロ対策・イラク復興支援担当大使などを経て、2007年9月から現職。

(2009年1月23日朝刊掲載)

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