×

ニュース

米、東欧MD中止 対露核軍縮 年内合意に道

 米政府は17日、ロシアが強く反対してきた東欧でのミサイル防衛(MD)計画を中止すると発表した。ブッシュ前米政権が推進してきたMD計画を「核なき世界」実現を目指すオバマ政権が明確に転換した。ロシアはMD計画に強く反対し米ロ核軍縮交渉で最大の障害となってきたが、ロシア外務省は直ちに歓迎を表明。交渉の年内合意にも展望が開けそうだ。

 オバマ大統領は今月24日、核軍縮・不拡散に関する国連安全保障理事会首脳級会合を主宰する予定で、MDの棚上げはこの流れを後押しするとみられる。大統領は17日、ホワイトハウスで「有効と証明された方法に基づいた新たな計画を実施する」と述べ、欧州でのMD計画を全面的に見直す考えを示した。

 MD計画の見直しは、12月に失効する米ロ間の第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新たな核軍縮条約締結の前提条件としてロシアが強く求めてきた。

 チェコのフィシェル首相は17日の記者会見で、前日の16日にオバマ大統領と電話会談し、棚上げの意向を伝えられたことを明らかにした。ポーランド側にも米政府当局者が説明した。

 ブッシュ前政権はイランの脅威から欧州諸国を防衛する目的で、ポーランドに地上発射型迎撃ミサイルを配備、チェコにレーダー施設を建設する計画を推進していた。

 棚上げは、イランの長距離弾道ミサイル開発が当初の予測より進んでいないとのオバマ政権の判断に基づく。

 ロシアは東欧配備が自国の脅威になるとして反発。オバマ大統領は今年4月、チェコなどを訪問した際、イランの脅威がなくなれば計画を変更する考えを示唆。見直しを担当者に指示していた。

東欧での米ミサイル防衛(MD)
 米国がイランなどのミサイルから欧州を守るためとして東欧での導入を目指している防衛計画。弾道ミサイルをレーダー網で探知し、着弾前に撃ち落とす構想で、ブッシュ前政権は2012年までにポーランドに地上発射型迎撃ミサイルを最大10基、チェコにレーダー施設を配備するとした。08年7月、チェコと協定に調印し、同8月にポーランドとも合意した。ロシアは自国を対象とした配備だとして反発していた。

(共同通信配信、2009年9月18日朝刊掲載)

年別アーカイブ