×

社説・コラム

『核兵器はなくせる』 ICCND議長アドバイザーのラフ氏に聞く

■記者 岡田浩平

 日豪両政府が主導する「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の議長アドバイザーを務めるティルマン・ラフ氏(53)=メルボルン市=が「ビキニデー」(1日)に合わせて来日した。核兵器全廃を目標とする委員会の議論のポイントや、10月の会合の舞台となる被爆地・広島の役割を聞いた。

政治の意思が廃絶促す

 -核軍縮の現状をどうみますか。
 大きな危機と好機が同時に来た。軍縮プロセスが停滞する中、核保有国は新兵器を造り、特定の国家、組織への攻撃姿勢を強めている。開発技術の取得も簡単だ。一方、核抑止体制を築いたキッシンジャー元米国務長官が、核保有が安全につながらないと指摘したのは重要だ。核軍縮を政策に掲げたオバマ米大統領の挑戦を国際的に支える必要がある。

 -来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ、委員会は何を提言できますか。
 廃絶の手法はすでに多く報告されているが、実行されていないのが問題。政治の意思で政治を刺激する委員会のアプローチは正解だ。個人的には「核兵器禁止条約」の交渉へ道を開いてほしいが優先順位は高くなさそう。それ以外のところで、いい成果を出すと思う。

 -2月のワシントン会合では被爆証言もありました。
 核問題の議論は非常に抽象的だが、広島、長崎の被爆者にとっては違う。使うと人や動物、土地がどうなるのかというのをまず考えるべきだ。証言は、それを委員が知るためにも重要だった。ワシントンでは、委員会と米政府要人が会議を持ち互いに支え合う方針も確認した。委員会は、提言を出す前から核軍縮への好影響を与えつつある。

広島市民の後押しに期待

 -報告書づくりの最終会合を広島市で開くことへの期待は。
 広島には、運動を力強く進める被爆者がいる。市が平和市長会議でイニシアチブをとっているのも大きい。市民が積極的に委員会にかかわるよう期待したい。

核不拡散・核軍縮に関する国際委員会
 日本の川口順子、オーストラリアのエバンズ両元外相が共同議長を務め、米国やロシア、インド、パキスタンなどの元首脳、外相ら15人で構成。テーマは核軍縮、核拡散防止、原子力の平和利用で、昨年10月以後2回開いた。核兵器廃絶国際キャンペーンの豪代表のラフ氏はNGOと委員会の橋渡し役としてエバンズ議長からアドバイザーの指名をされている。川口氏のNGOアドバイザーはピースボート共同代表の川崎哲氏。

(2009年3月6日朝刊掲載)

関連記事
「NPT」へ連帯訴え 焼津と広島でビキニデー集会 (09年3月 5日)
川口元外相ら、NPT会議の成功訴え (09年2月17日)
広島の被爆者ら3人 ICNNDで証言 (09年2月17日)

年別アーカイブ