×

社説・コラム

『核兵器はなくせる』 ピースデポ特別顧問・梅林宏道氏に聞く

■記者 吉原圭介

 オバマ米大統領が「核兵器のない世界」への包括構想を表明した5日には北朝鮮による弾道ミサイル発射もあった。世界の安全保障にかかわる2つの動きについて7日、NPO法人ピースデポ特別顧問の梅林宏道氏(71)に東京都内で聞いた。

 -北朝鮮の発射強行は東アジアの安全保障にどう影響しますか。
 (1998年のテポドン試射ではしなかった)事前通告を今回はした。一応はルールに従っている。まず向こうの言い分も冷静に聞くべきではないか。日本は国内で憎悪感情と危機感をあおり、軍事訓練のようなことをした。中国にも警戒心を抱かせ、緊張を高めるだけだ。

 軍事と平和の両面で使える技術について、例えば核では国際原子力機関(IAEA)という監視機関がある。ミサイルにはない。これを機に、ミサイル発射には国際チームを立ち会わせるなど監視の枠組みをつくってはどうか。日本はその音頭をとればいい。

 -北朝鮮は米国、中国、ロシアには事前通報しました。日本は相手にされていません。
 六カ国協議に協力的ではないとみているのだろう。一方、米国も本心では今回の日本の対応を好ましく思っていないだろう。北朝鮮との対話を進めたい米国は(休戦状態の)朝鮮戦争を終わらせたい。六カ国協議の継続を阻害するかのような日本の過剰な言動を苦々しく思うだろう。

 -梅林さんが提唱している「3+3」など、北東アジア非核兵器地帯化の構想にどう影響しますか。
 構想を実現するには六カ国協議の場が重要であり、当事国の賛同を得るには北朝鮮がネックとなる。国際社会の目を引きたい彼らに核兵器を手放させるため、協議を維持して説得することが大事だ。

 -「核の傘」に頼る日本は非核地帯構想に賛同しないのでは。
 日米安保の維持と核の傘から出ることは矛盾しない。まずこの点を確認すべきだ。米国には日本を防衛する義務があるが、日本が「核兵器によらない安全保障を」と言えばいい。非核地帯ができれば核の傘もいらない。

 -同じ日のオバマ演説の評価は。
 ひとまずは高く評価する。しかし核拡散防止条約(NPT)に加盟している非核保有国の不満にどう対応するかの言及はなく、核弾頭保有状況の透明化についても触れなかったのは問題だ。

 核兵器の保有国すべてが廃絶協議のテーブルにつくには、まず米ロが500発まで削減すべきだ。そうしないと中国が(自国の核削減に)反対する。米ロが早期締結を目指す第一次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約にこの数字が盛り込まれるよう、日本は外交面で努力してほしい。それが「核攻撃を受けた唯一の国」の道義的責任だ。

うめばやし・ひろみち 東京都立工科短大助教授などを経て1997年、ピースデポを創設した。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)東アジアコーディネーターも務める。


「3+3」構想
 北東アジア非核兵器地帯構想を具体化する提案。韓国と北朝鮮、日本が非核兵器地帯となり、米国とロシア、中国がこの地域に核攻撃や威嚇をしないと誓約する。梅林氏らが1996年に提唱した。

(2009年4月8日朝刊掲載)

関連記事
「核なき世界」へ オバマ米大統領が包括構想 CTBT批准目指す (09年4月 7日)
北朝鮮ミサイル発射 東北上空通過 落下なく迎撃せず (09年4月 6日)

年別アーカイブ