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社説・コラム

『核兵器はなくせる』 ICNND共同議長・川口順子氏に聞く

■記者 道面雅量

 川口順子元外相は、日本とオーストラリア両政府が主導する「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」の共同議長を務める。国際委の議論の行方と核兵器廃絶を実現する方策についてインタビューした。

 -米ロ首脳会談で核削減交渉が合意され、オバマ米大統領も「核兵器のない世界を目指す」と明言するなど、今の好機をどう生かしますか。
 国際委がそのサポートとなるいい報告書をつくり、世界の政治家へ訴えていきたい。オバマ氏は大統領選の最中から前向きな発言をしてきた。(核兵器廃絶への構想を述べた)チェコでの演説にはすごく勇気づけられた。

 -核軍縮の名で老朽兵器を整理するだけでは、といった懐疑的な見方も出ています。
 それは違う。オバマ氏は「ゼロにする」と言った。今年2月に国際委の第2回会合があった米ワシントンでバイデン副大統領やジョーンズ大統領補佐官らに会い、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准などを要請した。その際も、米政府の方向性に手応えを感じた。

 -「何年までに何発まで削減」といった具体的な数値目標はありますか。
 これから報告書をつくる中で皆で決める。ただ廃絶までには、核をゼロにできる状況か見極める「バンテージポイント(眺望点)」という段階がある。その時点で(核弾頭数の)具体的な数字が入っていることが大切だ。

 -国際委で、核攻撃されない限り核を使わない「先制不使用」政策を保有国に求める案も検討しているのですか。また、その意義は何ですか。
 「先制不使用」の言葉が独り歩きしているようだが、要は「核は核に対する抑止だ」と明確にしてほしい、ということ。すべての兵器の抑止に核が必要となれば、他の国が核を持とうとするのも止められない。核の価値をどう減じるかだ。

 -今年10月に広島市で開かれる国際委の最終会合をどうリードしますか。
 何よりも各委員に原爆資料館や原爆ドームを見てほしい。核廃絶にはいろんな理屈があるが、人類が使ってはいけない兵器だと心の底から思うことがベースになる。分析の確かさ、行動計画の現実性で世界の政治家を納得させ、行動させる報告書をつくりたい。

 かわぐち・よりこ 通商産業大臣官房審議官、サントリー常務などを経て環境相、外相を歴任。参院議員(比例代表)。


核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)
 川口元外相とオーストラリアのエバンズ元外相を共同議長に、米国やロシア、インド、パキスタンなどの元政府高官ら15人で構成。来春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ向け、核兵器廃絶への実効性ある提言を目指す。

(2009年4月15日朝刊掲載)

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