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社説・コラム

『核兵器はなくせる』 河野洋平衆院議長に聞く

■記者 吉原圭介

 河野洋平衆院議長に22日、核情勢をめぐり東京都内でインタビューした。超党派の国際軍縮促進議員連盟会長も務める河野議長は「今こそ核兵器廃絶の国際世論を高めるべきだ」と強調した。

 -メドベージェフ・ロシア大統領は20日、オバマ米大統領の「プラハ演説」を一定に評価しました。米ロ関係をどうみますか。
 オバマ大統領の演説は、唯一核兵器を使用した米国の「道義的責任」に触れるなど称賛に値する。ロシアも聞き流すのではなく、受け止めた。両国とも軍や強硬派の反発があるなかで勇気ある発言。彼らを孤立させないために国際世論は支持を表明するべきだ。

 広島で昨年秋、主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)を開き、米国のペロシ下院議長に被爆者の話を聞いてもらった。彼女は「核兵器のない平和な世界をつくらなければいけない」と何度も言っていた。プラハ演説にはそのフレーズがあり、米国の民主党内に彼女の意向が浸透しているのではないか。

 -日本の国会議員が米国の議員に包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を働き掛けるアイデアをお持ちだと聞きます。理由は。
 プラハ演説に被爆国日本は最も強く共感するべきなのに、反応がいまひとつだと感じている。賛同の意思を表す国会決議をすぐにするなどのアクションがあって良かった。核兵器廃絶に慎重な人にもアピールできる。

 麻生首相はオバマ大統領に親書を送ったというが、中身が見えないのでは意味がない。オープンにして日本のリーダーの賛同の気持ちを伝えることが大事だ。それは、核兵器に反対する人たちを勇気づける。

 -中立を期す議長の立場に、もどかしさはありますか。
 政局が緊張している中で議長として軽々な行動はできない。本当ならワシントンに飛んでいってCTBTに反対する議員を説得したり、米ロ以外の核保有国に日本の気持ちを伝えたりと、行動したいところだ。

 -核兵器廃絶への道筋をどう描いていますか。
 一挙にできるかというと複雑で難しい問題はある。しかし可能だ。核保有国が何発持っているかなどを明らかにした上で政治家が議論すればいい。2020年までに核兵器をゼロにする平和市長会議の「2020ビジョン」など、目標を設定することは大事だ。

 国会議員の中には北朝鮮のミサイル問題などがあると「核廃絶を急がないと」「米国の核兵器に頼らないと」などと両極の反応が起きる。政治家は現実を見ることが大事だが、それだけではなく、核兵器廃絶という目標の下で議論すべきだ。

(2009年4月23日朝刊掲載)

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