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社説・コラム

北朝鮮核実験 東京大公共政策大学院 鈴木達治郎客員教授に聞く

■記者 金崎由美

 北朝鮮の核開発はどの程度まで進み、核実験を繰り返させない方策はあるのか-。核不拡散分野の論客である東京大公共政策大学院の鈴木達治郎客員教授(58)に聞いた。

 -2回目となる実験強行をどう受け止めましたか。
 無能力化作業を続けてきた寧辺の核施設の復旧を4月に宣言していた。懸念はしていたが、予想以上に早期だった。再処理施設を再稼働させた後、半年ほどかけてプルトニウムを抽出すると踏んでいたから。

 -核開発のレベルをどう見ますか。
 前回の実験は爆発力が1キロトン以下といわれた。今回、プルトニウムの質も量も同じだとすれば、爆発装置の技術は確かに上がっているだろう。ただ、飛躍的に能力が向上したとまでは断定できない。

 一方、過剰反応すると、北朝鮮にますます「核兵器は有益なカード」と思わせ、核軍縮の観点から問題だ。オバマ米大統領も唱えた「核兵器のない世界」を目指す潮流が、今回の核実験で後退することはないと再確認したい。

 -実験を繰り返させないために、どうすればいいのでしょうか。
 六カ国協議に基づく非核化プロセスの一環として昨年、プルトニウムを生産する実験用黒鉛減速炉の冷却塔が爆破された。しかし、再処理施設は解体を含む厳重な無能力化ができず、再稼働を許してしまった。

 プルトニウムが抽出できれば、それだけ核兵器材料の在庫が増えてしまう。困難は承知だが、六カ国協議に復帰させ、非核化プロセスを再開させることで解決を探るしかない。

 -核不拡散に有効な方策とは。
 商業ベースのウラン濃縮や再処理を多国籍事業にするなど、拡散リスクを下げるさまざまな提案がある。

 一方、実際に危険なのは、商業用施設よりも小規模の研究開発施設だ。これまで(インドなど)北朝鮮以外の核開発は、いずれも研究開発施設によるものだった。私は、ウラン濃縮、再処理の研究開発を単独で行わせず、国際事業とすることを主張している。

 自国で再処理を推進しながら、他国の研究開発を認めないのであれば、説得力に欠ける。日本は自国の研究開発施設を含めた国際化を提案し、核不拡散をリードするべきだ。

 すずき・たつじろう 電力中央研究所・社会経済研究所の研究参事、核兵器廃絶を目指す科学者団体「パグウォッシュ会議」評議員も務める。専門は原子力政策、核不拡散問題など。

(2009年5月29日朝刊掲載)

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