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「核なき世界」決議採択 安保理 初の首脳級会合

■記者 金崎由美(ニューヨーク発)

 核軍縮・核不拡散を初めてテーマにした国連安全保障理事会の首脳級特別会合が24日午前(日本時間同日夜)、国連本部で開かれた。冒頭「核兵器のない世界への条件づくりを決意」などとうたった決議案を全会一致で採択した。

 会合で議長を務めたオバマ米大統領は、核拡散の危険性が高まっているとして「新しい戦略と手法が必要」と強調、各国の協力を呼び掛けた。非常任理事国の首脳として鳩山由紀夫首相も出席した。

 決議文は米国が今月中旬、理事国に提示し、各国の意見を受けて修正した。前文24項目、本文29項目からなる。核拡散防止条約(NPT)を不拡散体制の礎石と位置付け、核軍縮と原子力の平和利用を推進すると強調。2010年のNPT再検討会議の成功に向けて、各国の協力を要請する。

 また核テロの脅威に深刻な懸念を表明。すべての国が国際原子力機関(IAEA)と査察の追加議定書を締結することを求めている。一方、米国と中国が署名しながら議会による批准に至っていない包括的核実験禁止条約(CTBT)についても、すべての国が批准し、早く発効させるよう訴えた。

 非核兵器地帯条約やその構想について歓迎、支持していることも核保有国の「チェンジ」を象徴している。核兵器の通過などが制限されるため核保有国は条約の議定書に賛同してこなかった経緯があり、5常任理事国すべてが核保有国である安保理で決議された意義は大きい。


核軍縮 国連で強調 オバマ演説 NPT会議を視野

 オバマ米大統領は就任後初めて臨む国連総会で、安保理首脳級会合の「核兵器のない世界」決議を主導し、23日の総会一般討論演説では核軍縮・核不拡散へ取り組む姿勢を強調した。4月のプラハ演説に続く「第2幕」ともいえる力強いメッセージ発信となった。

 24日に始まった包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進会議には、1999年の第1回会議以降初めて、クリントン国務長官をトップとする代表団を送った。「一国主義ではなく国際協調によって核軍縮・不拡散の流れをつくりだそうとあらゆる努力をしている」(米国の平和団体関係者)との声も聞かれる。

 「核兵器のない世界」という長期目標の一方で、来春に迫った核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功、という短期戦略の色彩も強い。

 米国が意識するのは国際社会だけではない。CTBTは未批准。米国内の民意を盛り上げ、上院議員3分の2の賛成を必要とする批准へのハードルを乗り越えたい―。そんな意図も見える。

 北朝鮮やイランの核問題、核保有へのこだわりが根強い米国の一部世論など、オバマ氏のビジョンにはいくつもの壁がある。被爆国として核兵器廃絶を訴えてきた日本は具体的にどう立ち回るのか。新政権に問われた大きな課題である。

安保理構成15カ国
▽常任理事国 中国、フランス、ロシア、英国、米国
▽非常任理事国(任期2年) オーストリア、ブルキナファソ、コスタリカ、クロアチア、日本、リビア、メキシコ、トルコ、ウガンダ、ベトナム

(2009年9月25日朝刊掲載)

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