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社説・コラム

研修生招待 大きな成果 退任のアジミユニタール所長

■記者 桑島美帆

 今月末で退任する国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所の初代所長、ナスリーン・アジミ氏が26日、広島県庁を訪ねて藤田雄山知事に辞任のあいさつをした。アジミ氏に、2003年7月の着任以来の6年間を振り返ってもらった。

 -なぜ、この時期の退任ですか。
 これまでの仕事第一だった生き方を変えようと考えた。本年度の事業展開を考慮し、今のタイミングが最善と判断した。ユニタール広島がさらに活力を得るには、新しいリーダーが必要だとも考えた。すでに国連が公募などで後任選びを進めている。7月末までには決まると思う。

 -6年間を振り返っての思いは。
 着任した日の朝、事務所が入る広島商工会議所(広島市中区)屋上に国連旗を掲げた。立ち会った警備員が、正面の平和記念公園を見ながら「母と祖母が眠っている」と教えてくれた瞬間、ここが人類にとって非常に重要な地なのだと悟った。

 世界各国からできる限り多くの研修生を招くことを最優先に取り組んできた。アフガニスタンの若手官僚を毎年集めて研修を開くなど大きな効果を生んでいると確信している。広島県をはじめ地元の支援に感謝したい。

 -今後の課題は何だと考えますか。
 ユニタールを被爆地広島に置き続けることが重要。軍縮や核不拡散、温暖化、食糧問題をテーマに研修プログラムを充実し、広島事務所の可能性を広げてほしい。地元の大学や市民団体との関係を深め、認知度を高める工夫も続けてほしい。

 -被爆地の現状についてどう思いますか。
 私が生まれたイランでも今、深刻な人権侵害が起き、毎日胸を痛めている。広島が訴え続けてきた恒久平和の大切さをもっと世界に広める必要がある。

 広島の「平和」は平和記念公園の中だけにとどまっていないだろうか。地域の人材を生かし、広島県の街づくり全体に「平和」のコンセプトを導入してはどうか。行政や文化施設、教育・医療機関が連携してできることはたくさんあると思う。

(2009年6月27日朝刊掲載)

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