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社説・コラム

『この人』 平和記念式典で平和の鐘をつく遺族代表 西村知子さん

■記者 水川恭輔

 「原爆の日」の午前8時15分、遺族を代表して鐘をつく。特別な日に鳴らす鐘に、普段から平和記念公園(広島市中区)を清掃したり、修学旅行生を案内したりしている人々への「感謝の念」を込める。日々の積み重ねが平和を支えていると思うからだ。

 平和記念公園に近い私立通信制のデネブ高校で2004年から教えている。毎朝流れる「平和の時計塔」のメロディーが、公園から聞こえる日もある。そんな身近な空間への関心が強まったのは、昨年8月に初めて教師として携わった平和学習がきっかけだった。

 登校授業の日、生徒約10人と一緒に公園一帯を歩いた。点在する慰霊碑の場所やその由来、公園設計に込められた狙いを調べた。

 予想をはるかに上回る原爆犠牲者の碑、原爆ドームを象徴に「あの日」を忘れまいとの意志が貫かれた設計…。修学旅行生や観光客を熱心に案内するボランティアの姿も印象的だった。「公園が日々、発する平和のメッセージの大きさに気付いた」と振り返る。

 64年前。祖父の弟が爆心地から約1.5キロ、現在の中区東白島町の職場で被爆死した。今の安佐南区八木にあった祖父宅にけがをした親類が避難した。「追悼と平和のため自分も何かしたい」。募り始めた使命感を胸に式典に臨む。

 平和学習は、先輩教師から受け継いだやり方に加え、平和記念公園を舞台にした自分なりの手法も考えていきたいと思っている。被爆地から響かせる鐘の音。「平和を守っていく決意」を世界に伝えるつもりだ。安佐南区在住。

(2009年7月22日朝刊掲載)

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