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社説・コラム

『この人』 オバマ大統領の母校の日本語教師 ピーターソンひろみさん

■記者 馬上稔子

 日本語教師として勤めるハワイ・プナホウ学園の生徒2人とともに広島を訪れ、平和記念式典に初参列した。「生徒たちは原爆被害を地域で広める懸け橋になってほしい」。日焼けした笑顔、口調は柔らかい。渡日資金は、20年以上前から同僚らと作る日本語教科書の印税を充てた。

 学園はオバマ米大統領の母校。自らは広島市南区出身の被爆2世だ。「被爆地の声を大統領に伝えよう」と生徒に呼び掛け、中国新聞の連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」に協力。ジュニアライターが読者から集めた大統領の広島訪問を呼び掛ける手紙100通を74人の生徒が英訳した。「被爆地の人たちの思いをくみ取るのは私たちの責任」。教え子たちのそんな感想を心強く思ったという。

 手づくりの日本語教科書はハワイ移民の歴史、自らの家族の被爆体験も盛り込み、現在4巻まで増えた。授業では生徒に、戦争体験について家族からの聞き取りも宿題に課す。旧日本軍に攻撃されたアジア出身家族の体験から、日本だけが被害者ではないことに、自らもあらためて気付かされたという。「移民が多い土地だから、人々はいろんな考えを持つ。それでも生徒は一人の人間として、何ができるのか考えてほしい」

 今回広島を訪れた生徒は帰国後、450人の同級生に報告する予定。「被爆地で感じた気持ちを次の行動につなげてほしい」「中には2人目の将来の大統領がいるかもしれない。少しでも広島のことが伝われば、何かが変わる」。今後も毎年、ハワイの生徒を広島へと送り出すつもりだ。

 1972年、ハワイへ。夫は今年5月に他界し、ホノルル市で一人暮らし。旧姓中井。60歳。

(2009年8月10日朝刊掲載)

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