×

社説・コラム

海自のインド洋給油活動 ハーバード大 ジョゼフ・ナイ名誉教授に聞く

 米国を代表する国際政治学者で知日派のジョゼフ・ナイ・ハーバード大名誉教授が共同通信のインタビューに応じ、日本の新しい連立政権が海上自衛隊によるインド洋での給油活動を撤収する場合はアフガニスタンの安定化に向けた代わりの貢献策を示す必要があるとの見解を示した。

  ―政権交代後の日米同盟はどうなりますか。
 同盟は日米両国の国益であり、日米安保条約改定以来50年間の経験に立脚している。摩擦や問題があっても特別の重要性があり続ける。

  ―米国主導のグローバリズムを批判した鳩山由紀夫民主党代表の論文が米有力紙に掲載されました。
 多くの米国人は驚いた。グローバリゼーションで利益を得た日本からの批判は奇妙に映るからだ。論文は鳩山政権の外交方針の青写真というより、選挙キャンペーンの言葉のあやとみている。

  ―民主、社民、国民新3党の連立政権は海上自衛隊を給油活動から撤退させると主張しています。
 給油活動は日本のアフガン支援の象徴だ。やめるなら何を代わりにするかが問われる。文民による貢献強化でもいいと考える。

 昨年12月の鳩山氏ら民主党幹部との会談で、給油活動をやめる場合は同盟からの撤退と誤解されないよう注意する必要があり、代案が重要だと友人として助言した。

  ―今後の民主党の方針がいまだに見えません。
 新しい政権が準備万端で始まると期待してはいけない。(方針策定まで)数カ月かそれ以上かかるだろう。しかし、給油をやめて、代案がないなら米議会から(民主党が主張する)「対等な同盟」のために日本は何をしているのかとの疑問が出てくる。

  ―米軍普天間飛行場移設計画についても見直す方向とされます。
 在日米軍再編は合意まで非常に時間がかかった。再び時間を無駄にするのは目にしたくない。合意の日程を遅らせずに見直すならいいが、実際には難しいだろう。

 ―日米地位協定の改定問題は。
 環境面の懸念解消に向けた地位協定の改正は交渉の余地があるが、広範な改正なら複雑な事態となる。

  ―新しい同盟像は。
 国家を超えるテロや疫病対策、新エネルギーや気候変動問題がより焦点となる。日本が多くの特別な技術を持つ分野だ。伝統的な軍事的安全保障はピラミッドの底辺で、上方に新分野の問題があると考えたらいい。

  ―鳩山氏への助言は。
 彼であれ米政府であれ、日米同盟は世界で最も重要な関係の一つであり、小さな問題で破壊されないよう注意して堅持してほしいと言いたい。

 ジョゼフ・ナイ氏 
 1937年生まれ。カーター政権で国務次官補、クリントン政権で国防次官補などを歴任。1995年に冷戦後のアジア外交政策を規定した「東アジア戦略報告」をまとめ、その後も米国の対日指針策定に関与。外交や文化交流で他者を説得し引き寄せるソフトパワー論の提唱者。

(共同通信配信、2009年9月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ