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社説・コラム

社説 日米首脳会談 外交チェンジの一歩に

 滑り出しは安全運転に徹したということだろう。鳩山由紀夫首相はオバマ米大統領と初めて会談し、日米同盟をさらに深めていくことなどで一致した。

 和やかなムードの中で行われた25分間の会談。最初から、トップ同士が信頼関係を築くのが狙いだった。このため「対等な日米関係」という言葉に代表されるような鳩山カラーは薄められた。

 鳩山首相の雑誌寄稿文が、米国で波紋を広げたことも影響しているようだ。米主導のグローバリズムに批判的な論調が「同盟の弱体化を招く」との疑念を招いた。それを打ち消すためにも、同盟の強化と協調を打ち出す必要が鳩山首相側にあった。

 ただ世界の駆動軸は、米主導から多国間の合意づくりへと変わりつつある。オバマ大統領も国連総会で、単独行動主義との決別を宣言した。日米関係を基軸としながらも、米国一辺倒でなく対アジア関係も重視する。そんな日本外交のチェンジの第一歩として、日米首脳会談をとらえたい。

 今回、個別の懸案の多くは先送りされた。米国とすれば、交代直後の新政権の出方を見守る構えなのだろう。日本側が考えをまとめる当面の期限は、オバマ大統領が訪日する11月である。

 まずアフガニスタン支援。来年1月で期限が切れるインド洋での給油活動に代わり、民生分野での貢献を考えている。テロ掃討作戦は泥沼化し、武力での問題解決は難しそうだ。農業支援や職業訓練が候補に挙がるが、日本だからでき、なおかつ実効性のある支援の枠組みを早急に詰めるべきだ。

 在日米軍再編の見直し問題もある。首脳会談に先立ち、クリントン米国務長官は岡田克也外相に、協議していく構えは示した。とはいえ日米の合意事項が基本という米側のスタンスに変わりはないとみられる。

 3党連立政権での合意に基づき、沖縄県民の負担軽減の観点から、米軍普天間飛行場の県内移設計画をどう変更するか。こじれた問題の出口を探りつつ、米側との妥協点を見いだすのは容易ではなかろう。当面は、目指す方向性だけでもまとめる必要がある。

 さらに大きなテーマは、対米に加え対中国、韓国などアジアを重視する複線型外交の確立である。鳩山首相が思い描く東アジア共同体構想も、米国の理解がなければ進めることは難しいだろう。

 鳩山首相は今回、中韓露の首脳とも会談した。いずれも北朝鮮の非核化を協議する6カ国協議の構成国だ。北朝鮮も今、話し合い路線に転じる兆しが見える。拉致問題と併せ、交渉を本格化させることも新政権の課題である。

 核開発から手を引き、各国の支援で経済を再建するよう北朝鮮を促す。その延長線上に、北東アジア非核地帯構想も見えてこよう。

 唯一の被爆国ならではの多国間外交の積極展開。そんな日本の変化は、長い目で見れば、東アジアの安定と核不拡散を目指す米国の国益とも合致するはずだ。

(2009年9月25日朝刊掲載)

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