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鳩山首相 国連で被爆国の「責任」訴え 米との共同歩調も

■記者 金崎由美(ニューヨーク発)

 「世界の指導者の皆さんにも、ぜひ広島・長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んでほしい」。24日午前(日本時間同日夜)、国連安全保障理事会の首脳級特別会合での鳩山由紀夫首相の発言は、核保有国のトップが勢ぞろいした場で被爆国のトップが直接訴えたという意味で画期的だった。

 鳩山首相は「核兵器のない世界」決議を採択した特別会合と、昼の総会一般討論 で演説。オバマ米大統領のイニシアチブとの共同歩調をアピールした。

 同日午後には岡田克也外相も包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議に出席し、条約発効に向けた貢献を誓った。新政権の外交デビューは、核軍縮政策も「政治主導」への転換を印象づけた。

 鳩山首相は二つのスピーチで、非核三原則の堅持を約束。日本に核保有の能力はあっても、保有の意思はないことを断言した。これらを「唯一の被爆国の道義的責任」と表現し、北朝鮮の核開発に厳しい姿勢で臨みながらも、北東アジアの核軍拡競争には加わらない姿勢を示した。

 オバマ大統領が「核兵器のない世界」を明言したからといって廃絶が即座に実現できるわけではない。なによりロシア同様、米国自身が最大の保有数を誇っている。米国内には核戦力の保持を強固に主張する保守派がいる。彼らはその論拠として「米国の『核の傘』の信頼性が揺らげば、同盟国が自前で核保有に走る」と訴える。

 今回、鳩山首相自らがあらためて日本の「核武装論」を明確に封じたことは、米国の核削減の環境づくりに役立つであろう。

 しかし一方で、米軍備管理協会の核専門家ダリル・キンボール氏は、米国の核先制攻撃力が必要だとする日本の意向が、米国内の核削減の観点から問題視されている点を指摘。「政権交代後の日本が、その姿勢をどう変えていくかだ」と、冷静なまなざしを送る。

 鳩山首相は今回、米国の「核の傘」の保証を求め「核は必要」としてきた旧政権の二重基準については触れなかった。新政権は「核の傘」をどう定義、解消していくのか。米国との密室の議論だけではなく、国民的な議論が必要だろう。

 そして発言の冒頭で呼び掛けたように、被爆地が願うオバマ大統領の広島訪問実現へ、首相がどう動くかにも注目したい。

(2009年9月26日朝刊掲載)

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