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社説・コラム

社説 日米密約調査 核廃絶を目指す土台に

 一方の当事者である米側が「核密約」を認め、文書も公開されているのに、もう一方の日本政府がその存在さえ否定し続けている。

 国民を欺いてきたともいえる闇の部分を、政権交代でやっと正す機会が訪れた。日本外交に対する信頼回復への第一歩として評価したい。

 核兵器を積んだ米軍艦船の日本通過・寄港を黙認してきた核密約などの検証作業が、外務省の有識者委員会で始まった。座長の北岡伸一東大教授は「外交に機密はつきものだが、いつまでも不自然な状態が続くのは好ましくない」と強調する。

 調査は岡田克也外相の強い意向で実現した。日米外交史の専門家6人が歴史的背景も踏まえて精査し、来年1月にも報告書をまとめる。

 調査の対象は、核搭載艦船の寄港▽朝鮮半島有事の戦闘作戦行動▽沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わり▽有事の核再持ち込み―の四つ。 このうち寄港に関する密約は、1960年の日米安保条約改定時に交わされたとされる。核を搭載した艦船が日本に寄港しても、核の持ち込みと見なさず、事前協議の対象としない、という内容だ。これまでの内部調査で、この密約の存在を示す関連文書は確認済みとされる。

 外交文書は30年たてば公開が原則である。しかし、外務省の判断で非公開になるケースが多々ある。安全保障の根幹にかかわる問題を隠し続けていては、国民の理解と信頼は得られないだろう。一定の期間が経過すればすべて公開し、歴史の検証にさらすことが不可欠だ。

 唯一の被爆国である日本は、核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を国是としてきた。だが、北朝鮮の核の脅威などを背景に、核を搭載した艦船の寄港を容認する「非核二・五原則」への変更を求める動きがある。

 しかし、米国は1990年代に空母、駆逐艦などから核兵器を撤去し、現在は弾道ミサイル搭載型の原潜以外、核兵器が搭載されていない。核密約に縛られる状況ではないといえる。鳩山由紀夫首相は9月の国連演説で「非核三原則堅持を誓う」と国際社会に約束した。堅持は当然のことである。

 日本は核廃絶に向け北東アジアの非核化に取り組むとともに、「核の傘」に頼らない安全保障のあり方を、今こそ探るべき時である。核密約の検証はそのスタートとしたい。

(2009年11月29日朝刊掲載)

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