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社説・コラム

講演・インタビュー要旨 米のジョン・アイザックス氏

■記者 馬上稔子

 米国ワシントンの民間シンクタンク、軍備管理・不拡散センターのジョン・アイザックス専務理事(64)が広島市を訪れ、広島日米協会など主催の講演会で話したほか、中国新聞のインタビューに応じた。米国の核政策や世界の核情勢についての発言要旨は次の通り。

 米国は新しい変化の時代に入った。オバマ大統領のプラハ演説は核時代の幕開け以降、最も重要だったといえる。核軍縮に向けて前進するチャンスだ。

 ロシアとの間で核軍縮交渉を進めるなど、オバマ政権の現在の取り組みを評価したい。包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准するには、上院で共和党議員の賛成票を得る必要があり、来年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議までの実現は難しいだろう。

 一方で上院は、ロシアとの新しい核軍縮条約には賛成するだろう。これで勢いがつき、CTBT批准にもつながるよう期待したい。

 来年のNPT再検討会議については、拡散防止のための査察強化や核物質の管理徹底などを進めるため、ルールを守らない国に対応する取り決めづくりが必要だと考える。北朝鮮問題などをめぐり、国際社会は辛抱強く協議を続けなければならない。

 これらは米国単独で成し遂げることはできない。日本政府が活発な役割を果たすよう望みたい。

 これに関連し、一部の日本政府高官が米国のトマホーク核巡航ミサイル(潜水艦搭載の戦術核)の退役に反対してきたとの情報は私も耳にしている。しかしトマホークは1992年以降、前線に配備されず、貯蔵されてきた。17年間も倉庫にあった武器により日本への「核の傘」が強化されるというのは、意味が分からない議論だ。こうした(被爆国の)動きは核兵器廃絶に向けた努力を妨げる。

 「核の傘」は核兵器が廃絶されるまでは一定の役割を果たすと私は考えている。一方でアジアが経済的な結びつきを強めれば、核戦争を防ぐ安全保障となる。核兵器の必要性は次第になくなる。

(2009年12月17日朝刊掲載)

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