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社説・コラム

コラム 視点「世界の平和づくり・核廃絶へ 日本の若者の取り組みに期待」

■センター長 田城 明 

 過日、広島市をはじめ全国の高校生33人が英語で書いた作文を読む機会があった。来年2月下旬に広島市で開かれる「APEC(アジア太平洋経済協力会議)ジュニア会議」への参加希望をつづって応募したものだ。自身の体験などから社会の矛盾や課題を見据え、問題解決のために学び、役立ちたい。一人一人の思いが伝わる意欲的な彼らの作文を読みながら、正直、勇気づけられた。

 関心を向ける入り口はさまざまだ。両親と一緒に暮らしたことがあるジンバブエやジャマイカで実感した先進国と発展途上国の極端な貧富の差、タイや米国、そして帰国した日本でも目にする国民間の経済格差、気候変動に伴う環境への悪影響、宗教や民族の違いによって起きる紛争。広島の応募者12人のほとんどは、被爆の記憶を継承することの重要さや核問題に触れた。

 英語が共通語の国際会議。とあれば、応募した高校生に多少の異文化体験があるのは想像できる。彼らに共通しているのは、高校生であると同時に、一人の人間、日本人、何よりも「地球市民」としての自覚を持っていることである。

 「人間は一度に何百万人も殺せる核兵器を造りながら、なぜ飢餓で死ぬアフリカの子どもたちの命を救えないのか」「核兵器をなくすことも、紛争や貧困をなくすことも、環境破壊をくい止めることも、みんな底流でつながっている」

 その解決のためには、宗教や文化、人種、国籍の違いを受け入れ、「多様な価値を認め合う勇気を持つことだ」と東京都内の女子生徒は訴える。「相互信頼を築くことが友情をはぐくみ、それが世界の平和につながっていく」と広島市内の男子生徒。

 被爆地広島と長崎の中高生有志が核兵器のない世界を目指して交流を始め、11月末に「世界中のすべての人へ」と題して発表した平和宣言。その中にもこんな一節がある。

 「核兵器や武力でつくる平和ではなく、対話と信頼で平和を築いていきたい」「宗教・人種・言葉の壁を越えて、世界中の人々と手を取り合って行動していきたい」

 「暮らしと平和」をテーマにしたAPECジュニア会議に応募してきた高校生たちと、活動の焦点はそれぞれに違っても、思いは共通している。地域や国際社会が抱える矛盾や課題に対する若い人々の純真な思いと活動が、「変革」を生む力ともなる。貧困や戦争、核兵器のない平和な世界の実現に向けた高校生たちの取り組みが、国内外へ広がることを願って応援していきたい。

(2009年12月21日朝刊掲載)

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