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社説・コラム

永田町発 国会論戦へ <基地問題> 

■記者 岡田浩平、漆原毅

岩国「艦載機」検証促す 民主党 平岡秀夫氏(山口2区)

 自民党政権でまとめた米軍再編の中身を検証し、見直すべきところは見直すという党のスタンスは衆院選前から一貫している。

 普天間飛行場の移設先をめぐっては、在日米軍基地の75%がある沖縄県の負担を和らげたいという政権与党の気持ちは間違っていない。ただ、政権発足から4カ月の間に閣僚がさまざまに発言し、政府内で十分議論していない印象を与えたのはよくなかった。

 鳩山由紀夫首相が5月までに決める方針を示し、いろいろな可能性を追求している。個別の問題としてではなく、日米関係も含め大所高所から議論すれば違った結論になるのではないか。マスコミが伝える日米関係への「悪影響」は、結論を変えるのを嫌がる人からの発信という感がある。

 岩国基地への艦載機移転については、防衛省、在日米軍が設定した騒音の影響や飛行ルートの安全性確保といった諸条件に岩国があてはまり、ほかの選択肢を考えていなかったことが分かった。普天間に高い関心が寄せられ、政府が岩国を検証する余裕がなかったが、今後はしっかりするよう働き掛け続けたい。

 愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)の買い取りも、政権交代前から官僚が敷いたレールをそのまま走ったのではないか。ただ、土地利用について防衛省は米軍住宅用地とは言わず「地元の意向も十分考慮して決定する」と私には説明している。市民の福利厚生や市の発展に役立つ方向へ進めたい。


日米関係に深刻な影響 自民党 高村正彦氏(山口1区)

 日米安保は日本が米国に基地を提供し、いざというときに米国は日本を守る内容だ。鳩山政権は、普天間飛行場の移設を抑止力を含めた安全保障の問題としてとらえていない。

 日本は64年間平和を保ってきた世界でもまれな国だ。米軍の抑止力はよく機能してきた。ただ抑止力が実感しにくい一方で、基地の負担は分かりやすい。負担の部分だけを訴えるのは、ポピュリズムの典型だ。鳩山首相は「駐留なき安保」の持論を封印すると言ったが、もとの思想は変わらない。「基地は提供しないけど守ってくれ」と言うのは「パン屋で代金を払わずにパンをくれ」と言うようなもの。基地の提供があってこそ日米は対等になる。

 今までの案は間違いなく沖縄の負担を減らせる。自民党は13年間実行できなかったと言われるが、説得に時間をかけて実現まであと数年だった。ここまで来て壊す方がひどい。

 日米関係への影響は深刻だ。他国に日米の信頼が固いと思われれば抑止力は強まるが、信頼が損なわれていると思われたら抑止の効果は薄れる。それが非常に心配だ。

 普天間の余波で岩国基地の負担が増すことはないだろう。岩国について新政権の問題提起はなく、米国は当然実行されると思っている。ただ、イエスとノーだけを問うた住民投票は間違いだった。安全保障は国の責任だ。近く名護市長選があるが、自ら決めるべき首相が地方に判断を委ねるかのような態度を示してはならない。

在日米軍再編
 米軍の世界的再編の一環で、日米両政府が1996年から順次合意した。普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への移設と在沖縄米海兵隊員約8千人のグアム移転、厚木基地(神奈川県)に駐留する空母艦載機の岩国基地(岩国市)への移転が盛り込まれた。民主、社民、国民新3党の連立合意は「見直しの方向で臨む」と明記。鳩山首相は5月までに決着させる考えを示している。

(2010年1月19日朝刊掲載)

 

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