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社説・コラム

「核兵器はなくせる」 高須幸雄 国連大使に聞く

■記者 金崎由美

核軍縮前進へ好機運 イラン NPTの難題に

 一時帰国した高須幸雄国連大使に、核軍縮外交の現状や、5月に国連本部である核拡散防止条約(NPT)再検討会議の見通しを聞いた。

 ―核軍縮をめぐる国際情勢をどう受け止めていますか。
 オバマ米大統領が議長を務めた9月の国連安全保障理事会首脳級会合での「核なき世界」決議など、米国の変化はブッシュ政権では考えられなかった。

 スーザン・ライス米国連大使もオバマ氏の意向を理解し、核軍縮に熱心だ。昨年5月の北朝鮮の核実験の際に「直接の脅威だ」と主張したら、核開発や核保有を認めないとの強い意志を表してくれた。日本にとって心強い相手だ。

  ―日本が主導した国連総会での核廃絶決議で昨年、米国が共同提案国に加わったのも同じ流れですか。
 決議には包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進を盛り込んでいたため、ブッシュ政権の8年間は米国の賛成を得られなかった。それが、被爆国として働きかけたことで米国が動いた。

 国連安保理での「核なき世界」決議も当初はCTBTへの「参加」を求める内容だったが、日本が「署名、批准」と具体的な表現を主張し実現した。こうした努力が、5月のNPT再検討会議に良い影響を与えると考える。

 ―その再検討会議の見通しは。
 2005年の前回会議は議題すら決まらず、最悪だった。今回はNPTの第1の柱である核軍縮で良い雰囲気がある。

 しかし核不拡散、原子力の平和利用という第2、第3の柱をめぐり、イランの核開発が難題となっている。「NPT加盟国としてイランはウラン濃縮も含めて平和利用の権利がある。一方でイスラエル(の核兵器保有)は問われないのか」との主張が出るだろう。再検討会議でどんな議論になるのか、非常に心配している。

 ―潘基文(バンキムン)国連事務総長の広島訪問は実現しますか。
 潘氏と頻繁に話す機会がある。「広島、長崎を訪問する機会があれば、最も意味深い時期を選びたい」との意向だ。今はハイチ大地震被害への対応に忙殺されているが、真剣に検討しているのは間違いない。核軍縮に信念を持って取り組む潘氏にとって、8月6日の被爆地訪問は貴重な経験となるはずだ。国連大使として、できるだけの対応をしたい。

(2010年2月5日朝刊掲載)

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