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被爆時計 刻み続ける時 1930年 福屋創業期の記念品 展示

■記者 増田咲子

 百貨店の福屋(広島市中区)が創業まもない1930年に客に贈った記念の置き時計が、今も現役で時を刻んでいる。所有しているのは南区東雲本町の金子隆一さん(69)。原爆の被災を乗り越え、親子2代で使い続けてきた。福屋は創業80周年を記念し、八丁堀本店(同)で10月1日から展示する。

 1992年に77歳で亡くなった母のトク子さんが女学生だった30年、開店1周年を記念した福屋の福引の1等として当てた。時計は外側が木製で高さ24センチ、幅19センチ、奥行き8.5センチ。当時の店のマークが記され、ぜんまいで動く。

 時計はトク子さんとともに、今の南区山城町にあった自宅で被爆した。家は半壊したが、時計は無事だった。これまで故障は一度もないという。

 福屋が80周年を記念して募ったエッセーに、隆一さんが時計を題材にした文章を応募して福屋の目に留まった。「時計は宝物。お墓参りで母に報告した。きっと喜ぶと思う」と隆一さん。時計は正面玄関前で13日まで展示する。

(2009年9月28日朝刊掲載)

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