×

社説・コラム

「核兵器はなくせる」 須田明夫 軍縮大使に聞く

■記者 岡田浩平

現実踏まえ廃絶主張 米のCTBT・中東 懸案

 被爆国政府の核軍縮・不拡散外交を担う須田明夫軍縮大使に、5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の見通しを中心にインタビューした。

 ―今回のNPT再検討会議は成果を収めると思いますか。
 2005年の前回に比べ、米国はオバマ政権のもと核軍縮への動きが顕著だ。一定の成果を得られるのではないかとの期待を持って頑張っている。

 ―懸念材料は。
 いくつかの重要な点で、もう少しいい動きがあればと思うが、見通しが立っていない。米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)をいつ批准できるか。再検討会議で常に議論になる中東問題も進展がなく、気がかりだ。楽な会議になるとは思っていない。

 ―日本はどう役割を果たしますか。
 唯一の被爆国というのが、われわれの仕事の基盤だ。思想、政策として絶対に核兵器を持たないと決めた国として、核兵器保有国にもはっきり主張できる立場にある。一方、複雑な安全保障環境を抱え、米国との同盟関係もある。核兵器廃絶を主張するだけではなく、現実を踏まえた政策をとっている。

 そうした点を前面に出し、会議の成功に向けて昨年から意図的に関係国や関係者と何度も議論している。会議の議長を務めるフィリピンのカバクトゥラン外務次官補とも年末に私の公邸に招いて率直に意見を交わした。

  ―核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の報告書は会議にいい影響を与えると思いますか。
 報告書は、どういう段取りで進めれば完全な核軍縮に近づくかの具体的な案を出し、各国の関係者の評価も高い。再検討会議の議論の活発化に間違いなく貢献する。

 ―ジュネーブ軍縮会議(CD)で兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉は再開できますか。
 一生懸命やっているが、特に難しいのはパキスタンだ。米国とインドが交わした原子力協力協定など、各国のインドに対する(協調の)姿勢に不満を強めている。それは地域安全保障の話であってカットオフ条約交渉とは直接関係ないと説得しているのだが、見通しは立っていない。

 すべての核保有国も入っているCDは、単なる意見交換の場ではなく、交渉して条約を作る場だ。地道ではあるが、共通の利益を見いだす努力をほかの国とともに強めないといけない。

(2010年2月6日朝刊掲載)

関連記事
「核兵器はなくせる」 高須幸雄 国連大使に聞く(10年2月9日)

年別アーカイブ