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社説・コラム

中国新聞 政経講演会 日米中の戦略関係と国際情勢 森本敏氏

■記者 加田智之

 中国新聞社と中国経済クラブ(高橋正理事長)は10日、広島市中区の中国新聞ビルで中国新聞政経講演会を開いた。拓殖大大学院の森本敏教授が「日米中の戦略関係と国際情勢」と題して講演した。森本氏は、鳩山政権の対中政策や米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に言及し「日米同盟の修復が不可欠だ」と強調した。要旨は次の通り。

 国際会議に出る度に、日本の影響力が落ちていることを感じる。もう一度(影響力を)取り戻すことはできないだろうか。

 まず2012年という年に焦点を当てて話をしたい。

 東アジアを取り巻く環境や重要国がどう変化するか。一番やっかいなのは米国だ。今年はオバマ政権の信任投票ともいえる議会中間選挙があるが、民主党は勝ちそうにない。負ければオバマ大統領が2期8年やるか不透明になり、大統領選がある2012年には米国がもう一度、変ぼうするかもしれない。

 ロシアや韓国も2012年に大統領選挙がある。台湾の総統選挙もそうだ。軍事力が近代化している中国の指導者も代わる。2012年には周りの国のリーダーが全部代わるかもしれない。大きな変革の年になるだろう。

 今年中に変化が起きる大きな問題の一つには、核軍縮の問題がある。5月には核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれる。2005年の前回会議はまったく成果がなかった。今回も成果がなかったらNPT体制は終わりだ。4月には核安全保障サミットもある。これらの会議を核軍縮につなげられるかが今年の大きなテーマだ。

 中国はすごい勢いで成長している。米国は中国を「協調したいが、価値観が相いれない国」として是々非々の戦略を立てている。

 中国は経済成長のためにも、最大の投資国であり輸出相手でもある米国や日本とうまくやっていきたい。日本は、自民党政権の時は米国と似た戦略だったが、民主党政権ではどうだろうか。

 民主党は対中脅威感が薄い。中国は2012年には空母を実戦配備するだろうが、民主党の中枢には日本の海上輸送についての警戒感がない。中国に対する米国の抑止力に気づいていないことが、米軍普天間飛行場の移設問題につながっている。

 乱暴な話をする。普天間移設問題の解決法は三つしかない。現状維持▽現内閣が総辞職し、新内閣の責任で名護市辺野古へ移転▽問題解決を夏の参議院選挙後に先送り―だ。先送りの確率が高いように思う。

 日本が生きていくには、傷ついた日米同盟の修復が不可欠だ。民主党は迷路から抜け出すように新しい解決方法を見つけてほしい。

(2010年2月11日朝刊掲載)

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