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社説・コラム

社説 核廃絶へ日豪連携 NPTに弾みつけたい

 日本とオーストラリアが、核軍縮と拡散防止で協力を深めていくとの共同声明を発表した。「核兵器のない世界」の実現を後押ししようとする姿勢を評価したい。

 オバマ米大統領が昨年春に打ち出した核なき世界。それを受けて同盟国である日豪両国が、核政策を大胆に変えるように米国に求めたのが、共同声明の柱だ。

 「核の傘」に守られているせいか、これまでは米国に遠慮しがちだった。今回、大きく踏み込んだといえる。

 しかも今年は、5年に1度のチャンスが巡ってくる。5月に開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議だ。核超大国の米国やロシアをはじめとする核クラブの5カ国に、核兵器の削減を迫る数少ない場である。新たな保有国をつくらないための手だても、じっくり話し合える。

 共同声明は、核兵器の脅威を人類の最も深刻な問題とし、核なき世界に至る第一歩として、二つの手段を示している。

 一つは、核を持たない国への核兵器の使用禁止だ。核を持たない限り核攻撃されることはなく、逆に核を持てば、核攻撃のリスクを負うことになる。そんなルールが生まれれば、核を持とうとする国への歯止めとなるだろう。

 もう一つは、核兵器を持つ目的を、別の保有国からの核攻撃抑止に絞ることだ。通常兵器だけでなく生物・化学兵器などへの対抗手段としても使えないことにする。そうすれば核に頼る度合いは小さくできる、というわけだ。

 この二つの考え方は、核なき世界を目指す上で当然のことだろう。これから両国でさらに議論を深めていくという。

 日豪両国政府の提唱で2008年10月、核廃絶への道筋を話し合う「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」がスタートし、昨年秋には広島市で最終会合が開かれた。

 その提言のうち、核兵器の役割限定など、前向きな部分は声明にも反映されている。

 米国は今、8年ぶりの核戦略見直しを進めている最中だ。政府内や国内世論の中には、核兵器廃絶に否定的な意見も根強い。

 近くまとまる見直し報告書は、核なき世界への展望をどう描くだろうか。二つの項目もすんなりとは受け入れられそうにない状況の下で、支持率が徐々に下がりつつあるオバマ政権の覚悟が問われることになろう。

 日豪両政府は、報告書を踏まえて、再検討会議に向けて実現の可能性のある提案をまとめる方針である。日本も、どうやって核の傘をたたむかの道筋を考えることが求められよう。

 被爆国としては、核兵器そのものを禁止する条約づくりへの土台も築きたい。そうしてこそ、廃絶への道も開けるだろう。

 再検討会議の開幕まで、あと2カ月余り。欧州各国などとも連携し、あらゆる機会を生かして、米国はじめ保有国への働き掛けを強めるべきだ。

(2010年2月24日朝刊掲載)

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