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社説・コラム

禁止条約前進へ新戦略を カナダのロウチ元軍縮大使に聞く

■記者 金崎由美

日本は態度 明確に

 「2020核廃絶広島会議」(主催・平和市長会議、広島市)に招かれたカナダのダグラス・ロウチ元軍縮大使が27日、広島市役所で共同インタビューに応じた。「核兵器禁止条約(NWC)の具体化へ新たな戦略を」と市民社会への期待を語った。

 ―この時期の会議開催をどう評価しますか。 
 65年前、広島を悲劇が襲って以来、被爆者たちは「二度と繰り返してはならない。核兵器は廃絶しなければならない」と世界に訴えてきた。そして今、NWCへの支持が大きなうねりとなっている。

 5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議でノルウェーやオーストリアなどが条約を支持。これまでに世界の3分の2の国が賛同している。非常に良いタイミングと思う。

 ―NWCに賛同を表していない日本政府についてどう考えますか。
 日本は本来、主導的な役割を果たさなければならないはずだ。それは「核兵器のない世界」を唱えるオバマ米大統領への支持にもつながる。8月6日に広島を訪問する潘基文(バンキムン)国連事務総長もNWCを明確に支持している。日本も今こそ態度を明確にしてほしい。

 ―平和市長会議はNWCの前進へどんな役割を果たせますか。 
 各国の都市が加盟する平和市長会議は、NWCを支持する国と、そうではない国をつなぎ、行動を迫れる立場にある。大きな可能性を持っている。

 ―会議への期待は。 
 市民社会の新たな戦略を打ち出すことだ。各国の議員や、平和市長会議など市民社会のリーダーたちによる新たな連携の枠組みをつくってはどうか。

 NPT再検討会議が最終文書で潘氏の「核軍縮5提案」とNWCに言及したことは、われわれに新たなエネルギーをもたらした。この追い風を生かし、核兵器廃絶へさらに前進する具体策が必要だと考える。

ダグラス・ロウチ氏
 1929年6月、モントリオール生まれ。下院議員や上院議員、軍縮大使、アルバータ大客員教授を歴任。88年に国連総会軍縮委員会議長を務めた。国際非政府組織「中堅国家構想」の創設議長。マハトマ・ガンジー財団世界平和賞(カナダ)などを受賞している。

(2010年7月28日朝刊掲載)

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