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社説・コラム

新START 米上院が批准承認 オバマ構想実現へ一歩

■センター長 田城 明

 ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)で、危ぶまれていた米上院での批准承認が、ようやく実現した。近くロシア議会も同調するだろう。被爆地が訴え続け、オバマ大統領も唱える「核兵器なき世界」の実現にはなお、小さな一歩にすぎないが、米ロにとっても、国際社会にとっても、重要な一歩がしるされたといえる。

 オバマ大統領にとって、今回の批准実現は失敗が許されない状況にあった。失敗すれば、ロシアとの信頼関係を損なうだけでなく、大統領就任後に世界に向けて取ってきた核軍縮・不拡散へのイニシアチブが吹き飛んでしまうほどの影響を及ぼしかねなかったからだ。

 今も世界の約95%の核兵器を保有する米ロ核超大国。国際社会から大幅な核軍縮を最も求められている米国が原因で、新STARTが成立しなければ、ここ数年、世界的な高まりをみせている核軍縮機運も、核不拡散強化の取り組みも、逆方向に進む可能性は十分にあった。

 今回の批准実現には、オバマ大統領の核政策を支え、共和党に影響力を持つ元国務長官のジョージ・シュルツ、ヘンリー・キッシンジャー両氏ら元政府高官らが大きな働きをしたといわれる。彼らの助言に基づいて、オバマ大統領は、2009年4月のプラハ演説で、具体的な核軍縮への取り組みを表明した。

 米ロの新たな軍縮条約の実現はその一つにすぎない。ほかにも包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准、核テロ・核拡散にも関わる兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約)の早期交渉の開始などがある。

 先の中間選挙で大敗したオバマ民主党政権にとって、経済・雇用対策など内政をめぐって来年は一層厳しい政権運営を迫られよう。その中で次なる核軍縮政策をどこまで実現できるか。それには米国内はもとより、被爆国の日本を含め世界中の反核世論のさらなる高まりが欠かせない。

(2010年12月24日朝刊掲載)

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