×

社説・コラム

社説 メア氏更迭 沖縄の怒りに向き合え

 沖縄を蔑視し、日本国民を愚弄(ぐろう)する暴言だった。米国がいくら「政府見解とは違う」と言い訳しても取り返しはつかない。

 沖縄の人々を「ごまかしとゆすりの名人」などと述べた米国務省のメア日本部長が更迭された。当然の措置である。

 来日したキャンベル国務次官補はきのう松本剛明外相を訪ね、正式に謝罪した。早めに沈静化を図りたい米国の意図がみえる。

 米側が危機感を抱いた背景には予想を超える沖縄県民の怒りと反米感情の高まりがある。やすやすと鎮まりそうにはない。

 メア氏の発言は国務省内で行われた大学生への講義だった。「沖縄の人は怠惰でゴーヤーも栽培できない」。さらに和の文化を「ゆすりの手段」とするなど偏見に基づく物言いが目に付く。

 とりわけ無神経ぶりが際立っているのが日米関係最大の懸案の一つ、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題をめぐる言及である。

 名護市辺野古に移設する現行案を進めるためには、日本政府が「金が欲しいならサインしろ」と沖縄の知事に言う必要がある、と述べている。

 従来、政府は米軍基地を受け入れる自治体に見返りとして手厚い交付金や振興策などを示し、首を縦に振らせてきた。

 しかし今は違うのではないか。最近の沖縄の選挙結果を見ると、基地受け入れを強いるやり方が通じないのは明らかだ。

 メア氏は駐沖縄総領事を務めた知日派として知られるだけに、言語道断と言わざるを得ない。日本を担当する部長として日米関係の前線に立ち、クリントン国務長官にも直接意見を言える立場とすればなおさらだ。

 沖縄の反発は日を追って激しさを増している。県議会に加え、名護市など県内半数以上の市町村議会が撤回と謝罪を求める決議をした。「沖縄を軽視する米国の本音が表れた」との受け止めも当然といえる。

 メア氏だけでなく、対日政策の底に差別的な認識が潜んでいるのではないか。そんな懸念もぬぐえない。日本政府は毅然(きぜん)として米国の沖縄観をただし、猛省を促すべきだろう。

 政府の反応の鈍さも気になる。枝野幸男官房長官は当初、重大視しない考えを示していたが、沖縄の反発を受けて路線転換。ルース駐日大使に電話で「容認しがたい」と抗議した。腰が引けていると見られても仕方ない。

 在沖縄米軍の「抑止力」を「方便」とした鳩山由紀夫前首相の発言も記憶に新しい。暗礁に乗り上げている普天間移設問題はさらに混迷が深まった。

 戦後、一貫して日本は繁栄の陰で沖縄に「安全保障の負担」を押しつけてきたといっても過言ではない。在日米軍基地の約75%が沖縄に集中する事実が物語る。

 日本も沖縄の怒りに正面から向き合い、基地政策を問い直さなければならない。

(2011年3月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ