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社説・コラム

社説 東日本大震災と原発 総力で被曝食い止めよ

 時を追うごとに被害が深刻さを増す東日本大震災。気象庁はマグニチュード(M)をこれまでの8.8から9.0に修正した。文字通りの超巨大地震である。

 とりわけ地元住民をはじめ国民を不安に陥れているのが、地震のため停止した東京電力福島第1原発で広がる異常事態だろう。

 1号機は核燃料を冷やすことができず、国内で初めての炉心溶融を起こしたとみられる。

 続いて3号機も冷却装置が働かなくなった。圧力を下げるため、外側の格納容器から排気。核反応を抑えるホウ酸と冷却用の水を内側にある圧力容器に注いでいる。

 途中、ポンプが故障。炉内の水位が急激に下がるなど不測のトラブルが相次いだ。緊急措置が効果を発揮できるか予断を許さない。

 しかも避難した住民の中から被曝(ひばく)した人が出たという。今のところ、健康への影響はないとみられるものの、放射性物質の拡散を封じ込めて住民の被曝をできる限り食い止めなければならない。

 特に3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使っている。運転実績が乏しいだけに警戒が必要である。

 問題の1、3号機はもちろん、今回の地震で自動停止した全ての原子炉について、周辺での観測態勢を強めるべきではないか。線量のわずかな変化でも見逃さないよう、手だてを尽くしてほしい。

 無用の混乱を避けるために、専門家の協力も得て住民に正確な情報を分かりやすく伝えたい。

 避難先での困難な事情はあろうが、衣服の被曝線量の測定や健康診断を徹底し、薬剤の配布などを準備するべきである。専門家チームによる救護所を設けるという政府の方針は当然だろう。

 避難指示区域内からの移動が難しい病気の人や高齢者の保護も欠かせない。

 大地震と大津波に伴う混乱があったにせよ、情報提供の面では政府などの対応に疑問が残った。

 1号機建屋で起きた爆発事故の説明は5時間後と大幅に遅れた。当初は小出しに発表されるだけの情報にもどかしさが募った。

 本来なら、原発ごとに設けている応急対策の拠点施設(オフサイトセンター)で情報を一元的に集めているはずである。その割には発表のちぐはぐぶりが目立った。

 原子力安全・保安院と電力会社、県などの自治体が連携を強めるべきだろう。

 今回の事態を招いたのは非常時の備えが機能しなかったためでもある。トラブルが重大事故に至るのを防ぐ「決め手」とされる緊急炉心冷却装置(ECCS)が使えなくなった。いざというときに動かなければ原発の安全性そのものを揺るがしかねない。

 事故を受けて今後、全国の原発の総点検が必要になろう。設備の耐震性だけでなく、非常時の備えがきちんと作動するかどうかのチェックも不可欠だ。

 地震や津波で被災した人はもとより、原発事故による避難住民への支援にも全力を挙げたい。

(2011年3月14日朝刊掲載)

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