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社説・コラム

社説 原発放射能漏れ 総力戦で封じ込めよう

 東日本大震災が引き起こした国難である。東京電力福島第1原発の事故は前代未聞の事態が重なり、放射能漏れの危機が続く。

 避難や屋内退避を余儀なくされた周辺住民はもちろん、国民全体に不安が広がっている。

 大津波で冷却システムが動かなくなったことが原因だ。あらゆる手だてを尽くして水を送り、核燃料を冷却するしかない。

 最も切迫した状況にある3号機では、過熱した使用済み核燃料から多量の放射性物質が出る恐れがある。燃料を水に漬けて冷やすプールの容量は1400トンで、水位は相当に下がっているもようだ。

 おととい以降、陸や空からの放水が続く。それでも量的には状況の悪化を食い止めるためのつなぎの役割である。根本的には、いかに早く電源を回復してポンプによる冷却水循環システムを復旧させるかに懸かっている。

 幸いきのう1、2号機の近くまで外部電源の引き込みにこぎ着けた。放射線を浴びながらの大変な作業だが、ポンプを復旧させ原子炉や使用済み燃料プールへ一刻も早く水を送り込んでほしい。

 集中立地する6基の原子炉のうち、4基が部分的な炉心溶融や爆発、火災などに見舞われる異常事態が続いた。混乱はやむを得ないが、これまでの対応に危機管理が欠けていたことも否定できまい。

 政府と東電の連携が不足し、結果的に後手に回った印象は拭えない。1号機で水素爆発が起きた12日の時点で最大限の対策を取っておれば被害の拡大は防げた、と指摘する地元首長もいる。

 20キロ圏内から避難したり、20~30キロ圏内で屋内退避を指示されたりした住民たちは、放射線被曝(ひばく)への不安を募らせている。風評被害や正確な知識に基づかない偏見も広がっているという。憂慮すべきことだ。

 首都圏を離れる人すら一部で出始めている。米国などが80キロ内の自国民に退避勧告を打ちだしたことも、不安の広がりに拍車を掛けているのかもしれない。

 政府から確たる情報が出てきていないことに大きな原因がある。今後、想定される事態について積極的に情報を開示し、国民に説明すべきだ。

 今のところ、周辺住民への影響は発がんリスクが気遣われるレベルではないという。被曝による人体などへの影響についても正しい知識を広めたい。

 福島第1原発事故の深刻度はきのうレベル5に引き上げられた。今後も予断を許さない。被曝を伴う危険な作業に身をていしている人々には心から敬意を表したい。できるだけ短時間の作業で済ますためには、人数を大幅に増員するしかなかろう。自衛隊や警察、消防、他の電力会社などから、できる限りの動員もやむを得まい。

 世界中が心配している。関係機関が連携を密にするのはもちろん、各国の専門家や実行部隊の協力も全面的に受け入れて立ち向かう必要がある。国際的な総力戦で放射能を封じ込めよう。

(2011年3月19日朝刊掲載)

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