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社説・コラム

天風録 「ホットスポット」

 「ホットスポット」という言葉には、うっかりさわると火傷(やけど)しそうな響きがある。地質学では文字通り地中のマグマが噴き上がってくる地点を指すらしい。このところ新聞やテレビをにぎわしているのは、熱くないホットスポットだ▲福島第1原発の事故で放射性物質がまき散らされた。ただ同じようには拡散せず、放射線量の高いところが点々と見つかっている。原発から40キロ以上も離れた伊達市や、南相馬市でも観測された。風の向きや地形、土壌などが影響しているという▲どの場所がそうなのか、すぐには分からない。線量計だけが頼りだ。きのう市内全域で線量調査を始めた福島市。それでも29万市民の心配は拭えまい。秋からは幼稚園児や小中学生全員がバッジ式の小型線量計を着けることになった▲ホットスポットの懸念は首都圏でも広がる。都内の100カ所で一斉に放射線測定がスタート。線量計を手に公園や通学路をチェックして回る母親たちの姿がテレビで報じられる。今のところ、健康に影響が出るレベルではないようだ▲放射線には色も、においもない。「正しく恐れよう」といわれても素人は戸惑うばかりだ。遠く離れた人々にも飛び火していく不安というホットスポット。こちらには、どう向き合えばいいのだろう。

(2011年6月18日朝刊掲載)

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