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社説・コラム

社説 日米安保協議 沖縄無視した「絵空事」

 日米同盟の深化を再確認してみせたものの、最大の懸案である米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題は袋小路に陥った現状を追認するにとどまった。

 日米の外務、防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が民主党政権となって初めて開かれた。戦略目標を共有し、外交、防衛政策をすり合わせる重要な交渉である。

 発表された共同文書は、名護市辺野古にV字形の滑走路を造るという、かつての日米合意をほぼなぞる形になった。

 さらに「2014年までに移設」としていた目標期限はあっさり撤回した。着工のめどが立たないことの証しでもあろう。

 「最低でも県外」とうたう民主党政権に地元沖縄は翻弄(ほんろう)された。今や県民は県内移設反対で一枚岩となっている。仲井真弘多知事も辺野古移設案は「絵空事」と切り捨てたほどだ。

 そんな現行案になお、すがりついているのが政府与党である。「慰霊の日」できのう沖縄を訪れた菅直人首相は「県外移設は難しい」の一点張りだった。もはや当事者能力を失っているとしか言いようがない。

 一方、米国でも民主、共和両党の有力議員が辺野古案を「非現実的だ」とし、県内の米軍嘉手納基地への統合を提案している。求心力低下が目立つ菅政権が相手では、らちが明かないと踏んでいるのではないか。

 移設問題の新たな目標期限は「できる限り早期に」というあいまいなものだ。地元住民にすれば、これでは無期限に先送りされたのと変わるまい。「世界一危険」とされる普天間飛行場が半永久的に続く恐れさえある。

 そればかりか米側は、沖縄が反対する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備を決めた。頭越しで容認した日本政府に沖縄の怒りは高まっているようだ。「自公政権の時代よりひどい」といった声が出るのも当然だろう。

 在日米軍再編は沖縄だけの問題ではない。厚木基地から岩国基地に移転する空母艦載機の離着陸訓練先として今回、鹿児島県・馬毛島が書き込まれた。地元了解の手続きもなく唐突感は否めない。

 その場しのぎで、およそ説得力のないやり方はもううんざりだ。日米双方が今こそ、本気で打開の道を探るべきではないか。

 今回の合意では、日米で共同開発したミサイルの第三国輸出を容認した点も見過ごせない。

 混迷続きの国会で十分な検討がなされたようにもみえない。武器輸出に縛りを掛けた3原則の根幹を揺るがす問題である。国民の合意を踏まえないまま、なし崩しの政策転換は言語道断だ。

 新たな共通戦略目標は、軍事大国化に傾く中国への警戒感を色濃くにじませる。東アジアの平和と安全のために確固たる戦略が求められるゆえんだろう。

 現実を直視した外交の再構築とともに、在日米軍の再編もいま一度仕切り直す時期に来ている。

(2011年6月24日朝刊掲載)

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