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社説・コラム

『記者手帳』 原発は私たちの問題

■文化部 森田裕美

 「被害者であり、加害者であることをかみしめています」「原発立地県民として世界中の皆さんに、謝らなくてはいけません」

 福島第1原発事故を受け、着の身着のまま福島県から広島や近郊に避難した人たちの言葉だ。今月広島市内であった脱原発を求める市民集会で深々と頭を下げる姿に胸がチクリと痛んだ。「原発をよそに押しつけ、電気は使い放題…。謝らないといけないのはこちらの方」。そんな気持ちになって、メモを取りながら涙が出てきた。

 4月に育休明けで職場復帰して以来、取材先でも、同様の言葉を聞く。多くは長年、被爆地広島で核兵器廃絶や平和活動に関わってきた人たち。何年も続く被爆者の心身の苦しみを知り、原発や核燃料サイクルなどへの知識もあった。危機感は持っていたのに真剣に向き合わず後回しにしてきたと自分を責めているのだ。

 私もそう。国内外で核被害者を取材してきた。孫やひ孫の将来の健康影響まで心配し、苦しんでいる人をどれだけ見てきたことか。  著名人をはじめ多くの人が実感を込めて「原発のない暮らし」を求め、言葉にし始めている。今度こそみんなで知恵を絞らねばならない。自分にも言い聞かせている。

(2011年6月27日朝刊掲載)

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