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社説・コラム

社説 上関原発埋め立て免許 延長しない判断は妥当

 中国電力が山口県上関町で進めている原発の新設計画。二井関成知事はきのう、埋め立て免許の延長について現時点では認めない考えを示した。

 このままでは来年10月に免許は期限切れとなり、予定地の海面埋め立て工事は続けられなくなる。原発新設の大幅な遅れや抜本的な計画見直しが予想されるが、やむを得まい。

 知事が理由で示唆したように、国の政策が一向に定まらないことが背景にあるからだ。自然エネルギーの活用推進を打ち出す半面、福島など一部を除いて原発は「安全」としている。

 そうした国の姿勢に、県民の安全を守る立場から「待った」をかけるのは極めて当然といえよう。地元からすれば、原発の安全性への不信は拭えていない。

 現に山口県内では岩国、柳井、下松、周南市をはじめ、田布施、周防大島町などの議会も上関原発の凍結や中止を求める意見書を相次いで可決した。

 推進派である地元の上関町長もここにきて「原発のない町づくりも当然考えておかなければならない」との発言をしている。

 二井知事の判断は、こうした県民、国民の意向と無縁ではない。その声を国が十分にくみ取っているのだろうか。

 政府はこの間、静岡県にある中部電力浜岡原発の停止を促した。一方、その他の定期検査などで停止中の原子炉については「夏場の電力が賄えない」などを理由に運転再開を認める方針とされる。

 第1号として注目されているのが佐賀県の九州電力玄海原発だ。ところが、おととい政府が開いた住民説明会を見る限り、国民に広がった原発政策への懐疑がやすやすと解消されるとは思えない。

 ケーブルテレビやインターネットで中継された説明会の住民側出席者は、政府が事前に選んだ県民7人だけ。それでも2、3号機の運転再開に対する疑問の声が相次いだという。

 二井知事はきのう「国の動向を注視する」とも述べた。将来のエネルギー政策について国がきちんとした方向を示すよう求めたとも受け取れる。

 福島事故を受けての新設となれば、なおさら国民の理解を得ることが大前提だ。

 国が従来のように「まず原発ありき」の姿勢を続けるなら、地元は納得するまい。中電も肝に銘ずるべきではないか。

 原発がないのは沖縄だ。中電は原子力の占める比重が全国平均を下回ってきた。現状でも夏場のピーク時を切り抜けられるのは、こうした事情が見逃せない。

 太陽光や風力など自然エネルギーの活用に力を注ぐチャンスといえよう。原子力への依存度をさらに下げる努力は、地震や津波災害に備えた危機管理にも通じるはずだ。

 上関町など地元にとっては原発に頼らない町づくりを模索するきっかけとなろう。県はしっかり支援してもらいたい。

(2011年6月28日朝刊掲載)

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