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社説・コラム

社説 モンゴルに核処分場 問題多過ぎる日米構想

 経済産業省と米エネルギー省などが使用済み核燃料の貯蔵・処分場をモンゴルに建設する構想を進めていることが分かった。

 原子炉と核廃棄物処理をセットで新興国へ売り込む「原発ビジネス」を進めたい日米両国。技術支援を受けてウラン燃料の輸出を進めたいモンゴル。それぞれの思惑が一致したようだ。

 とはいえ「核のごみ」を途上国に押しつけることになり、構想には問題が多過ぎる。外務省が慎重姿勢を示すのも当然だろう。

 それに福島第1原発の事故の衝撃が広がる中、モンゴル国民の理解が得られるとは思えない。

 背景に、日米とも核廃棄物の最終処分場確保が国内では難しい現状があるのは間違いない。

 日本は、各原発の原子炉建屋や敷地内、それに青森県六ケ所村の施設内で使用済み燃料などを貯蔵している状態。地中深くに埋める最終処分場は候補地の見通しすら立たない。

 世界一の原発大国である米国もネバダ州の処分場建設計画を地元の反対で中止する構えという。

 増え続ける核廃棄物は両国にとって頭の痛い問題だ。モンゴルに受け入れてもらえれば、それが一気に解決する。

 新興国などに原発を売るビジネス上の狙いは、さらに明白だ。

 モンゴルには推定埋蔵量100万トンといわれるウランがほとんど手つかずのまま眠る。掘り出して核燃料を製造し、日本か米国から新たに原発を買った国に輸出する。さらに、その原発から出る厄介者の核廃棄物を引き受ける。

 そうした国際的な枠組みの下での包括的核燃料サービス(CFS)が実現すれば、モンゴルを含む3カ国が潤う。

 安全保障面の狙いも透けて見える。オバマ米政権は構想を進めることで、核不拡散体制を強化したいと考えているようだ。

 原発を稼働させると、核兵器の原料となるプルトニウムを含む使用済み燃料ができる。それをCFSで引き取れば、核拡散に歯止めがかけられるからだ。

 今回、計画が明らかになったきっかけは、米原子力大手を子会社に持つ東芝が、福島原発事故後の5月になって米政府高官に行った推進要請だった。

 原子力業界の焦りの表れにも見えるが、事故の反省はうかがえない。今は立ち止まり、事故の検証結果を待つべきではないか。

 処分場の構想に対し、モンゴルでは国民から強い拒否反応が起きている。「幼児から高齢者まで全員が反対と言っていい」との声が上がる。政府が同時に目指す原発の導入にも「産出する石炭で電力は十分供給できる」と疑問を呈する人もいる。

 モンゴルは内陸国であり、輸送手段の問題も大きい。使用済み燃料を運ぶことに通過国のロシアや中国の承諾が得られるだろうか。テロ組織に狙われるリスクも否定できまい。

 日本政府はフクシマの反省を踏まえた判断をすべきだ。

(2011年7月3日朝刊掲載)

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