×

社説・コラム

『インタビュー』 環境激変の原発 方針は 中国電力 苅田知英社長

■記者 山本和明

 6月に就任した中国電力の苅田知英社長(62)は20日、中国新聞のインタビューに応じ、島根原子力発電所(松江市)1、3号機について「稼働することが喫緊の課題」と述べた。一方、上関原発(山口県上関町)の来年6月の着工は、延期する可能性を示した。

 ―原発事故が起き、環境が激変する中での就任となりました。
 電気事業をめぐる情勢は厳しい。ただ電気事業は、いかに電気を安定的に送るかが変わらぬ使命だ。太陽光や風力など新エネルギーの活用は重要だが、発電設備としての限界、制約もある。原子力をある程度動かしていくことが重要であると今も思っている。当社は原子力比率が低い。もう少し上げて火力、原子力、その他のエネルギーのバランスをとることが大事だ。

 ―島根原発1号機の運転再開、3号機の稼働にどう取り組みますか。
 地元の理解を得て稼働することが喫緊の課題。1~3号機はそれぞれ貴重な電源だ。1号機の運転再開は自治体、市民の皆さんから理解を得るのが、動かすための最終的な条件となる。具体的な時期は、先方の理解を得ることであり、申し上げることは難しい。

 1号機は37年たっているが、安全であることを確かめ運転を継続するのが大前提。現状では廃炉計画はない。

 ―来年6月の本体着工という上関原発のスケジュールは厳しいのではないですか。
 進めていくという意思は変わっていない。福島を踏まえた教訓、安全対策をし、地元の意見をくみながらやる必要がある。少し時間がかかると覚悟せざるを得ない。(スケジュールを)現実的な姿にすることはあり得る。

 ―来年1月に島根2号機は定期点検に入ります。全ての原発が停止する事態を想定していますか。
 できればその段階で、少しでも原子力を運転したい気持ちはある。原子力がどこかで動いていることが経営上も重要だ。そういう状態になったときに、供給力をどうするのかリスク対応として考える必要がある。

 ―環境に配慮した石炭火力発電や、大規模太陽光発電所(メガソーラー)にどう取り組みますか。
 福山市のメガソーラーは12月に完成する。今後もメガソーラーを建設する気持ちはあり、コストダウンを図りたい。個人的にはこの機会に、高効率の石炭火力をどう位置付けるのか考える余地があるのではないかと思う。石炭火力の新設は難しいが、二酸化炭素(CO2)が多いからと捨てるのはもったいない。海外への技術協力を含め、この機会に見直すべきではないか。

 ≪略歴≫ 九州大法学部卒。1972年中国電力入社。倉敷営業所長、経営企画室部長などを経て2005年取締役。2010年6月から副社長考査部門長。2011年6月29日、山下隆会長(67)の後任として社長に就いた。自らを戒めるため、「大事は皆小事より起こる」との言葉を肝に銘じる。趣味はゴルフ、歴史小説などの読書。広島市佐伯区で妻と2人で暮らす。下関市出身。

(2011年7月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ