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社説・コラム

長野県松本市 国連軍縮会議きょう開幕 甲状腺外科医 菅谷市長に聞く 

■記者 岡田浩平

核廃絶の訴え 地方からも 福島の対応 政府は後手

  国連軍縮会議が長野県松本市で27日から開かれる。甲状腺外科の専門医で旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後にベラルーシで被曝(ひばく)治療に当たった菅谷昭市長(62)に、会議を招致した狙いや福島第1原発事故の受け止めを聞いた。

 ―これまで政令指定都市や県庁所在地で開かれてきた会議を招致した理由は。
 地方都市が平和や核軍縮の問題を考え、声を上げる契機にしたい。核兵器廃絶は広島、長崎両市が中心に訴えてきたが盛り上げるには地方の訴えも不可欠。今回をモデルとし、成果を出したい。

 ―開催決定後に原発事故が起きました。
 ベラルーシにいた時から、(原爆投下の)8月6、9日は反核運動が盛り上がるが、チェルノブイリの4月26日はそれほどでもないのが不思議だった。放射能被害では共通するのに、帰国後に会合などで現地の状況を話しても「かわいそう」で終わった。福島の事故後は日本でも原子力災害への関心が格段に高まった。核軍縮の取り組みも底辺が広がるのではないか。

 ―福島の事故の政府対応をどうみますか。
 残念ながら原子力災害への危機管理意識が欠如していた。全てが後手後手だ。例えば、汚染地域が半径30キロに及んでホットスポットが各地にできるというのはチェルノブイリで分かっていた。内部被曝や食物連鎖も。ベラルーシでは広島、長崎の経験を頼りにされた。チェルノブイリの教訓を事故対応に生かさないといけない。

 ―今後の対策のポイントは。
 汚染マップ作りや健康追跡調査は当然だ。問題は低濃度汚染地域の住民への対応だ。私が住んでいた、原発から90キロのモーズリ市をはじめ低濃度汚染地域では、今も子どもの抵抗力が低下しているなどの報告を聞く。特に子どもたちは一定期間疎開させることも考えるべきだ。

 松本市は福島県飯舘村の子ども48人をこの夏招く。長期間だと心配だというので当面は4泊5日。日々の不安を少しでも取り除ければと願っている。

 すげのや・あきら 信州大医学部を卒業後、入局。退職して1996年1月からベラルーシに5年半滞在し、首都ミンスクやモーズリ市で医療支援をする。帰国後、長野県衛生部長を経て2004年3月に松本市長に当選し、現在2期目。千曲市出身。

(2011年7月27日朝刊掲載)

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