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社説・コラム

独の「脱原発」法成立の背景は 緑の党 べーベル・ヘーン副代表に聞く

 原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会に招かれているドイツ連邦議会議員で反原発を掲げる緑の党のべーベル・ヘーン副代表(59)に、同国で2022年までに全原発17基の閉鎖を盛り込んだ「脱原発」法が成立した背景を聞いた。(岡田浩平)

 ―なぜ脱原発政策が実現したのですか。
 メルケル政権は昨秋、原発の稼働年数の12年延長を決めた。だが福島第1原発事故直後の南西部の州議選で戦後長く続いた保守の州政権が敗れ、初めて緑の党が首長になった。

 メルケル首相は原発から撤退しないと政権が持たないと判断したのだろう。7月に脱原発を図る改正原子力法などが成立した。選挙を通じ、有権者が政策を変えさせた。

 ―脱原発を国民が支持する背景はどこにあるのでしょうか。
 重要なのはドイツでは代替エネルギーがある点だ。緑の党は社会民主党と連立政権を組んだ02年、「脱原発」法を作り再生可能エネルギーへの転換を進めた。電力供給量に占める原発の割合は00年の30%が10年には22%に下がった。逆に風力、太陽光など再生可能エネルギーは6%から16%に伸びている。

 ―放射線被害の問題だけでなく、エネルギー転換による恩恵もあるとのことですが。
 経済面の効果が指摘されている。原発の雇用は3万人だったが、再生可能エネルギーは40万人を生んだ。再生可能エネルギーを支援する固定価格買い取り制度が01年にでき、多くの中小企業が風力発電などで利益を得ている。自治体や国民も発電や投資をしている。

 原発は核廃棄物の処分をどうするか解決できていない。原子力に将来はないが再生可能エネルギーは未来がある。ドイツはそのモデルを示せると思う。日本でも声高に脱原発を叫ぶだけでなく、国民が利益を得られる代替エネルギーの議論を高めることが重要だろう。

(2011年8月10日朝刊掲載)

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