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社説・コラム

社説 上関・島根の原発立地 エネ政策の明確化急げ

 脱原発依存へと政府のエネルギー政策の流れが変わる中、中国地方の二つの「新規」の原発が注目されている。まだ本格着工していない上関原発(山口県上関町)と、工事が最終段階を迎えた島根原発3号機(松江市)だ。

 発端は「原発の新規建設は現実的に困難」との認識を示した野田佳彦首相の就任会見だった。

 これを受け、上関については鉢呂吉雄経済産業相が、新規とみなして建設を困難視する見解を表明した。一方、島根については藤村修官房長官が、新規扱いから除外するとも受け取れる発言をした。

 福島第1原発事故から半年。放射能漏れの収束を最優先するのは当然だが、国内には中国地方の二つを含め14基の建設計画がある。政府は個別の計画の扱いを含め、新規原発についての統一見解を一刻も早く示してもらいたい。

 上関原発について経産相は、自らの諮問機関である総合資源エネルギー調査会の判断待ちとの前提付きながら、「(首相の言う)困難な中に入る」と述べた。

 計画が浮上して30年目となるが予定地の本格的な埋め立てもまだこれからだ。「新規」扱いでの建設中止は妥当であろう。

 山口県の二井関成知事も、国の政策の行方を見守る観点から、予定地の埋め立て免許の延長を現状では認めない考えを示している。  地元の上関町も、原発がない場合、ある場合のそれぞれを想定し、まちづくりについて考える協議会を町議会とともに発足させる方針を打ち出した。

 20日告示される上関町長選は、地域の将来を原点から見つめ直す機会となるだろう。

 気になるのは福島の事故後、中国電力が原発建設への理解を求め、広報誌を手に町民宅を訪ね回っていることだ。町長選には距離を置くというが、現段階ではより慎重な対応が求められよう。

 一方、工事進捗(しんちょく)率が90%を超えた島根原発3号機を「新規」とみなすかどうかでは、閣僚の間で微妙な食い違いがある。

 経産相は「議論があるところ」「総合資源エネルギー調査会の考えも聞く」と言葉を濁した。官房長官は「新規建設とは今から土地を手当てし、新たに建設する意味だ」と述べ、3号機は新規ではないとの見解を暗に示した。首相の発言を補足する意図のようだ。

 とはいえ3号機は津波対策や制御棒を駆動する装置の修理の遅れもあり、中電は来年3月の運転開始を延期している。まさに建設中だ。統一性を欠く閣僚の発言に地元が戸惑い、位置付けを明確にするよう国に求める声が上がるのも当然であろう。

 福島を見るまでもなく、原発に万一の事故があれば被害は広範囲に及ぶ。その意味でも新規建設は立地自治体にとどまらず、幅広い国民合意が欠かせまい。国の確固たる姿勢が求められるゆえんだ。

 政府は、建設中止に転じた地域への対応を含め、脱原発依存を具体化するエネルギー政策の確立を急いでもらいたい。

(2011年9月8日朝刊掲載)

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