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社説・コラム

社説 エネルギー政策見直し 私たちも共に考えねば

 福島第1原発の事故を受け、「脱原発依存」への道筋をどう描くのか。エネルギー基本計画の見直し論議が、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会で始まった。

 答申を経て政府は来夏をめどに、新しい基本計画を含めたエネルギー戦略を固めるという。

 2030年までに14基以上の原発を新増設し、総発電量に占める割合を53%に高めるとした震災前の基本計画は白紙に戻った。野田佳彦首相も就任直後には、「脱原発依存」の姿勢を示している。

 「原発推進は国策」の一本やりで、批判に正面から向き合わず、万が一への備えを怠った結果が今回の大惨事ともいえよう。

 その意味で調査会は、実質討議の場となる委員会メンバーの約3分の1を「脱原発派」と目される識者とした。評価できる。廃炉費用も含めた原発コストの検証をはじめ、冷静で説得力のある見直し案づくりを求めたい。

 問題は、エネルギー政策の今後を話し合う場が政府内に三つも併存することだ。

 関係閣僚で構成し国家戦略室が所管するエネルギー・環境会議は、電力会社のあり方も含めた総合的な政策方向を検討している。内閣府所管の原子力委員会は、原子力政策大綱の見直し論議をスタートさせた。

 それぞれがどう連動するのか。省庁をまたぐこともあって明確とはいえず、ちぐはぐな印象が否めない。きのうの衆院震災復興特別委員会でも「整合性が取れるのか」といぶかる声が出た。

 そもそも原発政策について野田首相の姿勢がはっきりしない。米紙のインタビューには「来夏までに原発の再稼働を目指す」と答え、国連演説では原発輸出の継続拡大を唱えている。

 「脱原発か推進かの二項対立は不毛」と首相や閣僚は繰り返す。ならば、対立を超えた針路とは何か、目指す方向をより明確に示してもいいのではないか。

 エネルギー・環境会議は7月の中間整理で、「減原発」を基本理念とし、段階的に依存度を下げるとした。今後の政府内の議論の土台とすべきだろう。

 ただ、その数値目標はこれからだ。原子力や火力、再生エネルギーの最適な組み合わせを選択肢の形で国民に提示するのは、来春になるという。

 エネルギー調査会からすれば、意見の集約に差しかかる頃となる。足並みをそろえておかなければなるまい。

 原発事故が投げ掛けたのは、単に電源選択の問題だけではないはずだ。国民生活や企業活動に深く関わるエネルギー政策に、さほど関心を寄せてこなかった私たちの姿勢も問われている。

 倫理委員会の徹底議論と民意を受けて脱原発に転じたドイツ、国民投票で決めたイタリアの例もある。日本もこの際、民意をくみ取り、政策に反映させていく手法を編み出したい。

(2011年10月6日朝刊掲載)

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