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社説・コラム

天風録「自由の国の女性たち」

 あてのない日々を過ごす10代の元少年兵たち、爆撃で右腕を奪われた5歳の少女…。内戦に終止符を打った8年前のリベリアを、戦場カメラマンの高橋邦典さんがとらえている。表情を失った子どもの何と多いことか▲今年のノーベル平和賞に輝く3人の女性。うち2人がこの西アフリカの小国から選ばれた。2005年にアフリカ初の民選女性大統領となり、国の再生に奮闘するエレン・サーリーフさん。それに非暴力運動の若き指導者リーマ・ボウイーさん▲大統領は人懐こい笑顔ながら「鉄の女」と呼ばれる。政府への抗議デモがあれば自ら現場に出向き、リーダーを探して話し合う。中国へ接近したと見せかけ、米国から経済援助を引き出す。したたかな行動力だ▲長引く内戦にしびれを切らし、和平交渉の場を大勢の女性と取り囲んだボウイーさん。てこでも動かなかったのは、子どもたちの命も表情も奪う戦争への怒りからだろう。そんな母の力が男たちから銃を取り上げていった▲「女性たちよ、歴史をつくる準備はできた?」。先の大統領選でサーリーフさんはそう呼び掛けた。今回の受賞もまさに、世界の女性史にしかと刻まれるに違いない。

(2011年10月9日朝刊掲載)

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