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社説・コラム

『潮流』 放射線学習の種

■論説委員 石丸賢

 首都圏ではこのところ、高い線量の放射線が思いがけない所で見つかっている。福島第1原発事故のあおりで、身の回りを自主測定する市民が増えているようだ。

 広島県内でも広告ちらしに放射線測定器や線量計が載るようになった。何週間か前は「台数僅少」と隅の方で縮こまっていたのが先週は防災グッズの目玉商品に。関心が高まっているのだろう。

 それもこれも「わが子を守りたい」一念からに違いない。行政に頼ってばかりいられないと放射線について学び、調べる。その目が地域の環境問題全般へと広がっていけば頼もしい。

 学校での放射線教育も来春、約30年ぶりに理科の授業で復活する。学習指導要領の見直しにより、医療や工業分野での放射線の応用や原発の仕組みが中学3年の教科書に盛り込まれるという。

 教室で併せて使われる副読本が先月から、文部科学省のホームページで先行して公開されている。小学生や高校生向けも発行されるようだ。

 面白いのは児童、生徒用と一緒に、教員用の「虎の巻」も並んでいることだ。教える時に押さえておくべき勘所、つまり先生の手の内まで明かしている。

 編集した文科省によると「学んでほしい内容は大人も子どもも同じ。隠す必要はない」そうだ。

 と言いながら、子どもたちにとって恐らくは一番の関心事に応えていない。肝心の原発事故については本文で触れていないのだ。

 「なぜ、あんなことが…」。疑問こそ学びの種となるはずだ。福島では夏休みに身近な放射線を測り歩いた児童もいると聞く。それこそ大人も子どももない。

(2011年11月2日朝刊掲載)

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