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社説・コラム

社説 もんじゅ見直し 廃炉に向けた決断必要

 高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に対し、厳しい評価が相次いでいる。

 政府の行政刷新会議の政策仕分けは存続の是非を含めた抜本見直しを求めた。衆院の決算行政監視委員会による国会版事業仕分けでも廃炉を求める声が相次いだ。

 政府の原子力政策である「核燃料サイクル」の要となる施設だが、安全性と経費の両面で疑問が多いというのが主な理由だ。

 野田佳彦首相は中長期的には原発への依存を極力減らすと表明している。しかし「脱原発依存」を掲げた菅直人前首相に比べ立場を鮮明にはしていない。

 核燃料サイクルへの姿勢が不明確なままでは世論の理解は得られまい。もんじゅの廃止を決断し、原子力行政に大胆なメスを入れる時ではないか。

 高速増殖炉はプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使う。運転で消費した量以上の燃料を取り出せるとされ、「夢の原子炉」とも呼ばれてきた。

 開発段階の炉のもんじゅは臨界に達した翌年の1995年末、冷却に使うナトリウムが漏れる事故を起こした。昨年、14年ぶりに運転を再開したが、炉内で機器を落として今も止まっている。

 掛かった費用は半端ではない。先日の会計検査院の指摘でこれまでに1兆円を超えることが分かった。停止中にも維持費などで年間約200億円が費やされている。

 冷却材のナトリウムは水や空気に激しく反応して取り扱いが難しい。トラブル時の対応は通常の原発よりはるかに厄介である。

 福島第1原発事故の収束が見通せず、既存原発の運転再開もおぼつかない。原発の安全性への信頼が失われた今、高速増殖炉計画の推進に国民の理解が得られるとはとても思えない。

 もんじゅ関連の来年度予算要求額は215億円と本年度並み。政策仕分けでは再稼働に向けた22億円の計上見送りを求めた。さらに無駄がないかチェックすべきだ。

 国が高速増殖炉開発を計画して40年余り。もんじゅの次は実証炉での試験が要り、実用化には最低でも40年かかる。

 欧米は、事故の続発や高コストを理由にほぼ撤退している。

 仕分けでやり玉に挙げられたように、実用化が困難な研究開発に今後も多額の税金を投じるのは、無策のそしりを免れまい。

 核燃料サイクルを形成するもうひとつの要は、原発の使用済み燃料からプルトニウムを抽出する再処理工場である。青森県六ケ所村で整備中だが、トラブル続きで完成が何度も延期され、こちらもコストが膨らむ一方だ。

 原子力政策については、国家戦略室に設けられたエネルギー・環境会議が来年夏をめどに新たな全体像を示すことになっている。

 もんじゅを諦めるとともに核燃料サイクルから手を引く時だろう。同時に原発の新設はやめ、古くなったら廃炉にする脱原発依存の道筋を確かにする必要がある。

(2011年11月24日朝刊掲載)

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