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社説・コラム

社説 COP17と日本 疑問残る「京都」不参加

 地球温暖化の防止へと望みをつないだと言えるだろう。会期を2日間延長した気候変動枠組み条約の第17回締約国会議(COP17)が閉幕した。

 難産の末、全ての国が参加する温室効果ガス削減の新たな枠組みづくりで合意した意義は大きい。

 先進国の削減目標を定めた京都議定書は2013年以降も継続することが決まった。だが、こちらは後退した印象が否めない。日本はカナダ、ロシアとともに不参加を表明しているからだ。

 温暖化は待ったなしの状況であり、取り組みを加速させねばならない。もとより日本は、京都議定書をまとめたCOP3の議長国だった。今回も率先して行動し、各国間の調整を図るリーダーシップが期待されていたはずだ。

 ところが今回、日本の存在感は薄かった。当初から京都議定書の延長に反対しただけでなく、延長されても参加しない姿勢を貫いた。国内の産業界の意向には沿うだろうが、疑問が残る対応と言わざるを得ない。

 議定書は今のところ法的拘束力のある唯一の枠組みだ。ただ温室効果ガスの排出量で世界1位の中国や2位の米国は参加していない。これに日本も不参加となれば、各国の削減意欲をさらに低下させ、国際ルールとしての形骸化も招きかねない。

 日本は先進国の一員として、京都議定書の枠内にとどまったうえで、新たな枠組みを主張すべきではなかったか。

 議定書継続の期間が決まらなかったのも気掛かりだ。短期間にとどまれば、目標通り20年に新たな枠組みが発効しても、「空白期間」が生じてしまう。

 今回の会議は、ほとんど実質交渉に絡まない日本を尻目に、欧州連合(EU)が論議を主導したようだ。米国や中国は新たな枠組みへの参加を表明し、最後まで難色を示したインドも歩み寄った。

 新枠組みの交渉は12年から始まる。実効性を高めるためには、強い法的拘束力と高い削減目標を持たせられるかが鍵となるだろう。日本は交渉に積極参加し、存在感を示してもらいたい。

 国際社会はいま、原発事故があった日本の温室効果ガス排出量の行方を注意深く見守っている。その意味で、会議で演説した細野豪志環境相が将来的な削減目標に触れず、閉幕を待たずに帰国したのは残念というほかない。

 会期中、環境保護団体が温暖化に後ろ向きな国に贈る「化石賞」の発表があった。日本は米国に次ぐ2位。何とも不名誉な受賞は、発言力が低下した日本の環境外交に対する失望の表れでもあろう。

 このまま京都議定書の継続に参加しなければ、日本は13年から、ルールに拘束されない空白期間に入る。自主的に削減は進めると政府はいうが、どんな国内対策を講じるのか。

 具体的な目標数値や方策を示さない限り、失われた国際社会の信頼は取り戻せない。

(2011年12月13日朝刊掲載)

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