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社説・コラム

社説 日朝関係の行方 核と拉致 動かす方策を

 日本と北朝鮮との関係は外交チャンネルがないまま手詰まり状態である。金正日(キムジョンイル)総書記の死去を受け、核・ミサイルの放棄と拉致被害者の帰国という懸案を包括的に解決する新たな方策を探りたい。

 独裁体制の維持は容認し難い。ただ軍の暴発や難民の流出といった混乱を避けるためには当面、後継者の正恩(ジョンウン)氏へのスムーズな権力移行を見守るほかなかろう。

 玄葉光一郎外相は一昨日、クリントン米国務長官と会談し、北朝鮮の新指導部にも核放棄への具体的な行動を求めることを確認した。日米は韓国との連携を軸にして中国やロシアとも協調する姿勢である。

 6カ国協議がその舞台だが、2008年12月以来3年も開かれていない。日米韓が再開の条件としてきたウラン濃縮の中止に北朝鮮が強く反発しているからだ。

 6カ国の枠組みの一環として、今年9月に行われた韓国と北朝鮮の南北代表協議は平行線のままで終わった。挑発行動をやめさせるのは当然としても、実務者の接触などを通じて、再開への環境を整えるべきではないか。

 そうした接触さえも途絶えているのが日朝間の現状である。09年5月に北朝鮮が2度目の核実験を強行し、日本は経済制裁を拡大した。当面、来年4月まで輸出入の全面禁止が続く。

 現在、制裁を解除できる状況でないことは明らかだ。とはいえ解除に何が必要かを北朝鮮に分からせることも大切だろう。

 日本の国民感情を踏まえると、拉致問題での進展が前提になる。

 08年8月、拉致被害者の安否について再調査委員会を設けると合意しながら、直後の日本の政権交代などで見送られたままだ。局面打開の手掛かりとして北朝鮮にあらためて行動を促してはどうか。

 交渉の原点は02年9月、当時の小泉純一郎首相が金総書記と会談し署名した日朝平壌宣言にある。

 拉致の文言こそ明記しなかったものの「日本人の生命と安全に関わる懸案」として取り上げ、最高指導者が拉致を認めて謝罪した。国交正常化交渉が頓挫した今も、この意義は薄れていない。

 権力の移行で国内事情を優先する北朝鮮は、米国や韓国との交渉に比べて日本との関係は重視すまい。そうした見方が大勢だ。

 北朝鮮は米国との直接対話を重ねている。先週、北京で行われた米朝協議では食糧支援で合意していたとの報道もある。実施の矢先の総書記死去だった。

 日本側は日米外相会談で、拉致問題を米朝対話で取り上げていることに感謝し、一層の理解と協力を要請した。

 ただ情報収集の徹底と米韓両国との連携強化だけでは核も拉致も動かせないだろう。水面下を含め、あらゆる手法で日本側の意思を北朝鮮に伝えるべきだ。

 民間でも、北朝鮮在住の被爆者支援や文化、スポーツでの交流といった幅広い分野で、関係改善につながる活動を強めたい。

(2011年12月21日朝刊掲載)

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