×

社説・コラム

『この人』 アート本の制作を通して核兵器廃絶を発信する「プロジェクト・ナウ!」代表 安彦恵里香さん

関心喚起し思いを共有

   「今なぜ核兵器廃絶が必要なのか。アートで思いを共有したい」と広島のイラストレーターや画家たち10人で2011年1月、アーティスト集団「プロジェクト・ナウ!」を結成した。半年後、核兵器禁止条約をテーマにアート本を出版。広島市内の書店や口コミで評判を呼び、販売部数は3千冊を超えた。

 公募で選んだ31作品を掲載する95ページ。地元の若手のアートシーンを凝縮するとともに、核保有国の核弾頭数など豊富なデータを日本語と英語で併記する。手に取るのは若い世代。高校の朗読会に使われるなど、手応えを感じている。

 茨城県出身。高校生だったとき、テレビで見たパレスチナ紛争で銃弾に倒れる母子の映像に衝撃を受けた。平和のために何かしたくて24歳で仕事を辞め、非政府組織(NGO)ピースボートの船で世界を巡った。その後、職員になり07年、広島事務所に派遣された。それが契機で核兵器の問題と向き合い始めた。

 「被爆者から『生きていることが犠牲者に申し訳ない』と聞かされショックだった」

 大量に人を殺すだけでなく生き残った人も苦しめ続ける核兵器。「現在も世界に2万発以上ある現実や原爆被害者の体験にもっと関心を持ってほしい」とアート本の発刊に至った。表紙の言葉「スイッチ・オン・イマジネーション(想像力にスイッチを入れよう)」に思いの全てを込める。

 ひろしまNPOセンター(中区)で臨時職員として働きながらの活動。今後は東京や大阪でも販売を目指す。「ヒロシマ・ナガサキに関心が薄い人たちに本を届け、心のスイッチを押したい」。中区在住。(金崎由美)

(2012年1月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ