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社説・コラム

ミャンマー民主化 広島平和研・ガネサン教授に聞く

 2011年3月に軍事政権が民政に移管したミャンマー。17日まで3週間余り、同国で政府や国民民主連盟(NLD)、少数民族の関係者たちに聞き取り調査をした広島市立大広島平和研究所のナラヤナン・ガネサン教授(国際関係学)に民主化の状況などを聞いた。(田中美千子)

 ―民主化の進み具合をどうみますか。
 長年、反対勢力の抵抗や諸外国の経済制裁を受けてきた軍事政権は10年11月、総選挙に踏み切った。軍出身のテイン・セイン大統領は少数民族と和解を図り、民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チーさん率いるNLDに歩み寄るなど民主化に本腰を入れているようだ。

 ただ動向は慎重にみる必要がある。連邦議会は憲法に基づき、上下院合わせた定数664のうち4分の1を軍人に割り当てている。大統領も軍隊の経験者や安全保障に精通した人物に限られる。4月の連邦議会補選には総選挙をボイコットしたNLDも候補者を立てるが、改選数は49。大勝しても軍関係者が議席の多くを占める現状は不変だ。

 ―民主化を阻む要因は他にありますか。
 少数民族の数は135に上り、民兵組織を有し国境地帯を実効支配する勢力もある。政府が武器保有を認めるなどの条件を示して停戦協定を結んだ例もある。いずれは政府軍とともに国境警備に当たらせる思惑だが、抵抗を示す少数民族は少なくない。時間をかけて対話を重ね、信頼関係を築くことが大切だ。

 ―11年12月、クリントン米国務長官や玄葉光一郎外相が訪れるなど各国との関係改善が進んでいるようです。
 地政学的な戦略から米国はミャンマーへの関与を決めた。中国へのけん制の意味も大きい。資源も豊富だ。国務長官の訪問はその表れ。経済制裁の緩和も進めるだろう。

 国内は失業率が高く、医療や教育、インフラ面でも大きく遅れている。東南アジア地域の安定のためにも日本は得意分野で積極的に支援するべきだ。民主化が後戻りしないよう教育面の支援に力を入れ、民主的な思想を育てることだ。

ナラヤナン・ガネサン
 1958年、マレーシア生まれ。国籍はシンガポール。シンガポール国立大上級講師、広島平和研究所助教授などを経て、2007年1月から現職。

(2012年1月22日朝刊掲載)

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