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社説・コラム

社説 沖縄防衛局長の「講話」 選挙介入否定できまい

 実質的な選挙運動とみなされても仕方ないだろう。

 米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市の市長選に向け、沖縄防衛局の真部朗局長が部下に「講話」をしていた。

 防衛省は「特定候補者を支持するような内容は確認されなかった」とするが、国家公務員の政治的中立性を疑わせる重大な問題だ。

 前局長の暴言により沖縄防衛局長に再任命された真部氏は、2年前にも普天間の移設先である名護市の選挙に関連して同様の講話をしたとされる。

 防衛省は過去のケースも調べて処分を決めるという。だが、処分すれば済む問題でもなかろう。

 個人的な行為なのか、組織ぐるみではなかったのか。この際、徹底的に解明すべきだ。あいまいに終わらせてはならない。

 講話問題は一昨日、衆院予算委で野党が取り上げて発覚した。防衛省によると、経緯はこうだ。

 沖縄防衛局の総務課が今年初め、メールで各部の庶務担当者に対し、自分が宜野湾市に住むか選挙権を持つ親戚がいる職員のリストを作るよう指示した。

 その上で先週、対象となる職員を2組に分けて勤務時間内に講堂に集め、真部局長が立候補予定者の名前を挙げた上で、それぞれの主張も紹介したという。

 5日告示、12日投開票の市長選は、自民、公明両党推薦の県議と社民、共産両党などが推す元市長の2人が立候補する見通しだ。

 防衛省の調査に対し、真部局長は「棄権しないよう呼び掛けた」と説明したという。それならば予定者の主張に触れる必要はなかろう。職員に与える影響も考えれば、立場を利用して選挙に介入したとの疑念は拭えまい。

 「誤解や批判を受けかねない」とする田中直紀防衛相は、真相解明の先頭に立ってもらいたい。野党が要求する国会での集中審議にも応じるべきだ。

 このところの防衛省の振る舞いに対し、沖縄県民は不信の極みであろう。

 昨年11月、前沖縄防衛局長は普天間の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価書の提出を女性への乱暴に例える暴言を口にした。  続いて一川保夫前防衛相は1995年の米兵少女暴行事件を「よく知らない」と答えた。さらに普天間を視察した田中防衛相は、ヘリコプターについて「そんなに多いわけじゃないんでしょう?」と述べたという。

 いずれも基地と隣り合わせで暮らす沖縄の「痛み」に塩を塗る不適切発言というしかない。

 移設に向けた評価書が、未明という非常識な時間に県庁へ運び込まれたことも記憶に新しい。

 政府は辺野古移設について「地元の理解を得て」と繰り返してきた。しかし、県民の不信を増幅させているのが当の防衛省である。これでは自ら移設を遠ざけているとしか思えなくなる。

 防衛省は、その体質の抜本改革から出直すべきだ。

(2012年2月2日朝刊掲載)

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